ウンベルト・エーコ「異世界の書 幻想領国地誌集成」533冊目

図書館のデータベースで見つけて借りてみたのですが、渡された本の大きさは23.8 x 16.8 x 3.6 cm、500ページ近くのオールカラーで重さ1.5キロという大著でした。価格はおよそ1万円。

あのウンベルト・エーコが、神話や伝説の世界に出てくる土地について広く深く考察し、調査したとんでもないボリュームの博物誌です。と思ってワクワクドキドキしながら借りたんだけど、エーコ氏はとても誠実な博物学者であってここでは幻想小説家ではないので、奇妙奇天烈な歴史的資料の羅列と分析に徹していて、西洋の神話にも世界史にもうとい私には、読み進むのがなかなか厳しい本でした。すごく美しい図版がたくさん載ってるし、素晴らしい本でしたけどね。はぁ~~(不足している知性のさけび)

異世界の書―幻想領国地誌集成

異世界の書―幻想領国地誌集成

 

 

櫻井成行「個人事業主のカンタンお金管理」532冊目

こういう本っていちいち感想を書くほうが無粋で、役に立つかどうかだけ☆で評価とかすればいいんじゃないかという気もします。かつ、こういう本を読んでるとこの先何を企んでるのか、勘繰られそうで面倒ですが、自分が忘れないためのメモを書いとこうと思います。

この本は、領収書をちゃんと取っておいたりするのが苦手な経営者向けにやさしくツボを押さえた本で、私もこの先自営業になったら気を付けたいなと思うポイントがたくさん書かれています。自営になって何年かしたら、「あー最初はこういう本も読んだっけなー」と思い出すのかな。

年商がいくらを超えたら法人化を考えるべきか?とか、税理士の選び方とか、著者の立場で提供できる情報を過不足なく伝えていて、あまり宣伝っぽくもありません。参考になりました。

どんどん貯まる 個人事業主のカンタンお金管理

どんどん貯まる 個人事業主のカンタンお金管理

 

 

劉慈欣「三体」531冊目

すごく面白かった。けっこうボリュームがあるけど、一気に読んでしまった。
エンターテイメントとして読み応えもあるし、イジワルな目で突っ込むつもりで読み込んでみても、科学的な破綻でしらけることもなかった。
斬鉄剣かよ?というナノテクのくだりは、ちょっと笑ったけど)

凄みがあるんですよね。日本のSFの中には情熱あふれるものも多いけど、感情に流れて本筋の背骨が弱いものも多い。ハゲタカとかハヤブサとか。ゴリゴリのハードボイルドにもできるすごい題材を、力量のある人が書いても、知的好奇心が最後まで続かない。この本は、大人が書いたものだと思える視点の高さが良いと思います。

一気に読み切って疲れたけど、これでは終われません!三部作のあと二冊、早急に翻訳を出してくれないと〜! いや、映画化もしてほしい。

三体

三体

  • 作者:劉 慈欣
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2019/07/04
  • メディア: ハードカバー
 

 

えらいてんちょう「しょぼ婚のすすめ」530冊目

面白かった。
私も似た考えだったんだけどなぁと思った。
若いころ、日本の人口減少傾向のことをなにかのデータで見て、子ども作らなきゃ!と思った。長くつきあってた人に「子どもが早くほしいから結婚しよう。いやなら別れて」っていって結婚した。。。

ではなぜ私はその後、子どもが持てないまま離婚しちゃったのか?夫になった人のせいだといいなぁ。でも二人の人間の問題が、どちらか一人だけのせいってことはないだろう。早ければ早いほうがいいと思ったけど、相手に心の準備ができていないと、急いでもダメってことだったのかな。

いまやもう、一人暮らし連続20年を超えて、いまから他人と共同生活をするのは…猫とは10年住んでるけど、このくらい手のかからない人じゃないとだめだろうな、私もたいして変われないだろうし。

本とはあまり関係ないけど、最近、一人で生きる覚悟をしてる人って美しい、と思うことが何度もあった。実際は独身っていうだけで親や兄弟と暮らしてたりするんだけど。多分、誰にも何も要求しないで自立・自足していられるという潔さじゃないかと思う。
そう考えても、猫と暮らすのって、お互いにあまり期待しないところが気楽で楽しいんだよな…。
いまが幸せだからいいか。(感想になってない)

 

窪山哲雄「伝説のホテルマンが教える 大人のためのホテルの使い方」529冊目

空港に早く着いたら、書店の店頭にこの本があったので買ってみました。けっこう、ワクワク、ドキドキしながら。

でも、わりとなんていうか、伝説のホテルマンって呼ばれて気持ちよさそうにしてる本だった。

シーツを毎日替えてもらうことって本当に必要?家でもやってる?
タオルは必要な分はもちろん使うけど、使ってないものまで替えてもらうのって気分いい?
ルームサービスでくつろいで食事ってできる?

・・・五つ星ホテルに泊まるような人なら、この人のお勧めするホテルの利用法を楽しめるのかもしれないけど、そういう育ちの人ってすごく少ない。せっかく日本育ちの日本人なら、ムダな気後れとかしないで、リラックスして楽しめる利用法をもっと教えてくれたらよかったんじゃないかな。

そもそも普通のOLが五つ星ホテルなんて泊まるもんじゃない、というのが、やっぱり前提なんだよね。ホテル側もそうだし、泊まるほうも。その垣根をどこまでなら超えてOKなのか、結局これを読んでもわからない。
まず、身の丈にあった、本当にリラックスできるホテルを選ぶことって、実は大事なんじゃない?
そこを、言わずに一冊書き切ってしまってるところに、ちょっと無理がある。
知られていない活用方法は、あんまりなかったなぁ。
身の丈を考えると、ボタンはやっぱり自分でつけ直そうと思う、そんな私ていどの一般的なオバサンが「そんな使い方があったのか!」と思うような活用法って、あるんだろうか。オバサンの喜ぶことは、オバサン自身が実験して調べたほうがいいんだろうな・・・。

ビル・クリントン&ジェイムズ・パターソン「大統領失踪 上・下」527-528冊目

センセーショナルなタイトルですよね。みんながよく知ってるビル・クリントン元大統領が「書いた」小説ってことで。

実際読んでみたら、すごく読みやすく楽しめる、大衆サスペンス小説という感じで、これは明らかにジェイムズ・パターソンというベストセラー作家(日本ではそんなに知られてないと思う)の文章に違いない。元大統領はおそらく、自分が大統領経験を通じて(自分が今失踪したら・・・)(もし腹心に裏切られることがあったら・・・)など思っていたことをアイデアとして出したのでしょう。迫真のリアリティはそれによるものだと思います。

という鉄壁のコンビが書いた本なのでとても面白かったのですが、そこここに、クリントン氏の思いもこめられていると感じます。小説内の大統領は彼と違って元軍人で、戦地ではヘリコプターから墜落したあとに拷問を生き抜いたというタフな経験があったり、判断に迷うことがなかったり、しめくくりには熱い演説を行って支持率が30%から80%にアップしたりします。こんな大統領がいたらいい、と思うのは著者たちだけじゃないでしょうけどね。

同じサイバー攻撃を日本で受けたら、たぶん正しいエキスパートを集めるのも対処するのも、難しいんじゃないかな・・・。すごいエンジニアは結構いると思うけど、日本は多国籍の人たちと普通のように本気でコラボすることに慣れてなさすぎる。あと二世代くらい経てみたら、できるようになるかな・・・。

色川大吉「わたしの世界辺境周遊記〜フーテン老人ふたたび〜」526冊目

図書館で見かけて思わず借りたんだけど、このフーテン老人さんの本業は近代史の教授だったんだそうだ。Wikipediaや著書のタイトルを見ても、長年社会運動に参加、というより旗を振ってど真ん中で活動してきたようです。まだ日本からのツアーなど一つも出ていない頃のウズベキスタンブータン、ラダックやカシミール地方にも、定年退職したあとにどんどん出かけていく。とても面白い人で、文章も読み応えがあるんだけど、自己主張が強くて編集者の言うことも聞かない(と、「はじめに」に自分で書いている)無頼っぷり、昭和というより明治の男を感じさせる気骨。Politically correctで気の抜けたような文章を読みつけた私の目には、少し刺激が強いというか。。。

でもこういう生き方には憧れるんですよ。私も、先のこともこれからの収入もわからないのに、会社を辞めて世界を飛び回る生活を始めようとしている。とんだ馬鹿野郎だけど、元来そういう性根だった自分を思い出したくなったのです。

ある部分では師と仰ぎ、別の部分では反面教師として、これからの行く末を見ていたいと思います。この前の旅行記も読んでみよう。