町山智浩「知ってても偉くないUSA語録」549冊目

勢いで借りてよく全部読むよなぁ、私。

この本は映画でも音楽でもなく、USでの暮らしの中で見えてくる最新の「US的だけど日本の人が知らないこと」「知ってるつもりだけど本当はちゃんと知らないこと」とかを深く深く、明るく面白くつづった記事のまとめです。ここまでテーマがジェネラルに広がるとますます、文才とかネタの面白さが際立ちますね。最近私がいつもなんとなく読んでる、ネットで流れてくる記事なんて、真偽のほども怪しいし突っ込み不足、誤字脱字や理解力、表現力のなさが目立つうえに面白くもない、という記事がいかに多いか。この本のような記事が書ける人のことを「コラムニスト」って呼ぶんだよな、と改めて思いました。

というのも、私は数十年前に友人に頼まれて、月刊誌に「ちょっと面白い英語ネタ」を連載したことがあるのです(!)。当時は外資系企業に勤めていたけど、住んでるのは日本だし、ネタはUSの親会社の同僚たちが面白がって流してくるネタメールとか…。月イチで分量も1000字程度なのに、ネタのストックはすぐ切れそうになるし、英語の面白さをどうやって伝えるか毎回悩んだものでした。そうやって何とかできた記事には素晴らしいイラストをつけてくれたのですが、自分が創作した文章をプロフェッショナルの力で完成させるとこんなに見栄えがよくなるのかと、泣くほど感動したものでした。

その時期の自分を思い出し、このレベルの記事を書き続けることの「しんどさ」を想像すると、プロってすごいな大変だなと、今更のように子供じみた感想を書きたくなってしまうのでした。

最近どういうもの書いてるんだろう?とネットを検索してみたけど、1映画につき音声ダウンロード220円は高いなぁと思うけど、USでは普通なのかな。私は音声を聞くより文字で読むほうが頭に入るほうなので、メルマガのほうがいいです。。。 

知ってても偉くないUSA語録

知ってても偉くないUSA語録

 

 

町山智浩「本当はこんな歌」548冊目

この本もとても面白かった。知らなかったことも知ってたことも色々だけど、90年代以降自分がさっぱり音楽を聴かなくなったのでそれ以降のバンドのことを知らなさすぎる。。。

ところで町山氏には情報屋がいるね?

彼の英語力はプロフィールを見る限り、ネイティブではない。英米に長く留学してたとか、日本の滞在の方が短い帰国子女でもなければ、英単語はともかく文化的背景(聖書に始まり20世紀のアメリカのテレビ番組や流行など)にここまで詳しくなるはずがない。ネットや図書館で調べられることにも限度がある。大人になってから移住しても、そういう過去の蓄積は身につかないので、奥さんがアメリカ育ちとか、アメリカの映画や音楽評論家と大親友とか…。そういうツテのおかげで、こういう本が日本語で読めるとしたらありがたいだけなんだけど、ツテが途切れたら途端にこの人の記事の読みごたえが「普通」になってしまうのかな。それはとても残念なので、情報源のキープも含めて、ずっと面白い記事を更新し続けてくれたら嬉しいです。

本当はこんな歌

本当はこんな歌

 

 

町山智浩・柳下毅一郎・ギンティ小林「雑食映画ガイド」547冊目

あー、こういう映画の世界ってあったよな。なんか劇画って感じの、大人のあぶらぎった男だけの、暴力とスピードとエロと金のうずまく世界。そのどれも関係ない映画ってあんまりないけど、そればっかりのギタギタでドロドロなやつ。

この中では町山氏はすごくお行儀がいいほうで、柳下氏と小林氏が取り上げた映画は一般公開されていないものや「ピンク映画」など、私とは永遠にご縁がなさそうなものが過半数でした。はぁ。

今回、この本(※町山氏の部分のみ)を見て新規に見ようと思ったのは以下の作品:「マシニスト」「ガールフレンド・エクスペリエンス」「アザーガイズ」。

雑食映画ガイド

雑食映画ガイド

 

 

 

町山智浩「最も危険なアメリカ映画」546冊目

こんどの本は、アメリカ映画の大メジャー作品にしのばせた政治的、ときに人種差別的な意図について大胆に切り込んでいます。

国民の創生」がKKK礼賛映画ということは、私も見たときに気づいて愕然としましたが、かの大人気作品「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「フォレスト・ガンプ」の偏りには気づきませんでした。日本のどの映画を見たって、人間の作ったものであるかぎり、どっちかには偏ってるので、歴史や政治に疎い海外の作品にも当然そういう偏りがあるのは当然といえば当然ですが、改めて指摘されると驚きますね。ディズニーの「空軍力による勝利」や「南部の唄」とか、表舞台に出ることはないでしょうね、日本では。もしかしたら逆もあるかもしれないけど。

この本で紹介されている作品は、今日本で入手するのが難しいものが多いのですが、かなり昔の映画が多いので、(映画の著作権存続期間は70年)日本語字幕なしでよければネット動画サイトで見られるものもあります。ちょこっと見てみたら、普通にエンタメ作品。怖いですね、観客って雰囲気だけに流されてしまうんだな。楽しそうな雰囲気で語られるといいことだと思ってしまう。映画の中の人たちが怒っていたら、相手は極悪人だと思ってしまう。この影響力の強大さを、作るほうも見るほうも認識しておきたいものだな、と思います。 

最も危険なアメリカ映画 (集英社文庫)

最も危険なアメリカ映画 (集英社文庫)

 

 

町山智浩「「最前線の映画」を読む」545冊目

熱烈なファンかなにかのように、同じ著者の本を読み続けてますが。

この本は2016年あたりに公開された新作映画を取り上げて、いつものように深堀りしています。

マーティン・スコセッシ監督、遠藤周作が原作の「沈黙」の分析が深くて泣けました。原作を読んだ時も驚愕したけど、映画があまりにも観客を追い込む辛い辛い作品だったので、とにかく日本の弾圧のひどさ、日本人の「お外の人たち」に対する残酷さに、自分が日本人であることを恥じたくらいでした…が、この本ではカトリックにおける「キリストの否定」、棄教ということについて詳しく解説していて、カトリック教徒がこの映画をどう見るかというヒントが得られました。

あと、今回この本を見て新規に見ようと思ったのは「ワンダーウーマン」。アメコミが原作の映画ってあんまり面白そうに見えないけど、ここまで深堀りしてもらえると、がぜん興味が湧きます。

「最前線の映画」を読む (インターナショナル新書)
 

 

山口雅也「續・日本殺人事件」544冊目

山口雅也って人は、推理小説の枠をどこに置けばどういう謎を新たに生み出せるか?ということの研究者みたいだ。

そもそも最初からこのシリーズは、実在の外国人の“手記”(小説ではなく)を日本語訳したという体裁で始まっています。それが出版され、著者?と思われる人と山口雅也は連絡を取り合っていることになっているので、実在を疑う理由もないんだけど…

そんな仕組み実験の中で、ホルヘ・ルイス・ボルヘス「砂の本」と化してしまったミステリーなのでした。

続・日本殺人事件 (角川文庫)

続・日本殺人事件 (角川文庫)

 

 

町山智浩「映画と本の意外な関係!」543冊目

これも面白かった。見た映画が多いけど、この本で読んで「見なければ!」と思った映画もあり、「ウォール街」とか「ソウルガールズ」とかった。見た映画が多いけど、この本で読んで「見なければ!」と思った映画もあり、「ウォール街」とか「ソウルガールズ」とか、レンタル予約を入れてしまいました。もともと評論には常に原作や、関連する本の詳細も書いている人なので、このタイトルの本だから今回は特に本についてページを割いている、というわけではないです。

見たいなと思ったのにAmazonでもTSUTAYAでも見ることも買うこともできないのが「ニーナ・シモン〜魂の歌」。ちょうど復活していた1992年に、彼女のコンサートに行ったのです。場所はハマースミスのタウン・アンド・カントリー・クラブかな、確か。私は単にすごいレジェンドだとしか知らなかったけど、クラブに集うひょろひょろした白人の男の子たちが、涙ぐんでたのは、音楽活動を辞めていた伝説のアーティストを見られた感動だったんですね。この映画Netflixでだけは配信してるようなので、このために再加入してしまいそうです…。 

映画と本の意外な関係! (インターナショナル新書)

映画と本の意外な関係! (インターナショナル新書)