阿部修平「暴落を買え!年収300万円から始める資本家入門」580冊目

タイトルはなんだかセンセーショナルな投機を勧めるように見えますが、実に穏当な貯蓄とバフェット式投資を勧める本でした。

バフェット式投資とは。私が理解しているわずかな部分をいえば、「しっかりしていて将来性のある会社の株を安いときに買え」。そういう株が”暴落”するのは世界景気が一気に後退するときとか、企業に一気に株価が下落するような事件が起こったときくらいじゃないかと思いますが、今がその「世界景気が一気に後退してるとき」というのは事実です。ただそういうときって株価が、会社自体の状態に関わらず投資家の精神状態?によって乱高下するので、企業研究というより心理戦になってくるんじゃないかな。

心理戦を勝ち抜くのに何が必要なのか。投資家の心理を知ること。投資家には機関投資家のほかにあまり企業研究をしないでグラフだけ見て売り買いする気まぐれで神経質な個人投資家層もあるみたい。いい会社に投資したい人にとって、彼らの心理まで読もうとすることって、いったい何の意味があるのか…。でも結局財布の口を開かせるのって、TVコマーシャルの印象だったりするってことですよね。自分なりの勝ち筋を見つけていくのってなかなか大変…。 

暴落を買え!~年収300万円から始める資本家入門~

暴落を買え!~年収300万円から始める資本家入門~

  • 作者:阿部 修平
  • 発売日: 2017/05/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

高橋桐矢「占い師入門」579冊目

会社を辞めたがってる友達が「占い師になりたい」と言ってたのを思い出して、会ったときに上げようと思って「ご自由にお取りください」に置いてあった本をもらってきました。が、読んでみたら予想外に面白かった!そして、すっごくまともな本でした。この本が出た当時は著者いわく「無名の占い師」だったそうですが、占い師の実情を、みょうにスキャンダラスにあおることなく、誠実に書いたほんとに良い本なんですよ。高校生くらいの子のための職業指南書として授業で使っても良さそうなくらい。

基本をきちんと勉強すること、その上で「100%は当たらないという認識をちゃんと持つこと」。タブー(たとえば病気や死期にかかわることは占わない)を厳守すること、などなど。この占い師さんになら自分の運命を相談したいなと思えてしまいます。そういう誠意の積み重ねが大事ってことだなと、身をもって示してくれた感じです。これは何の仕事でも同じかもしれませんが…。

占い師、いいなぁ。。。。いかん、やりかけの通信教育が2つもあるのでそっちが先だ!

占い師入門

占い師入門

 

 

ケン・リュウ「紙の動物園」578冊目

ほとんどがいわゆる未来SFの短編集「母の記憶に」を先に読んでしまったから、というのもあるけど、賞をそうなめにした短編「紙の動物園」に機械もソフトウェアも出てこないのが意外でした。SFの「サイエンス」の部分がなくて、ファンタジックで情緒的な美しい作品。民話、昔話のたぐいといってもいいんじゃないかな?

もののあはれ」も、日本人ってこんなに素晴らしい民族だっけと照れるくらい、しっとりとした味わいのある、しかし宇宙SF。

この2編をはじめとする名作揃いでした。ほんとに原題中国系SF作家、というかあの3人はすごい。人間への深い洞察、愛と憎しみへの理解と共感、現存するテクノロジーと開発されつつある未来のテクノロジーの把握がすごく高いレベルにあって、驚きます。彼ら相当知能指数が高くて作家じゃなくても一流の仕事ができる人たちですね。日本のそういう人たちは何をしてるんだろう?過去に傷ついたことの自己憐憫におぼれる中二作品(そういうのも実は好きでかなり読んだり映画見たりしてるけどさ)のまま、終わりそうになってないか?

ロシアや南米の「辺境」の作品の面白さにしばらく夢中になってたけど、在外チャイニーズもある意味、作家として注目されてこなかった辺境の人たちなのかも。まだまだ夢中になって読んでいきたいと思います。

しかし、それに匹敵するレベルの映画作品はあまり見ない気がするな。すごい人が出てきてくれたらいいのに。 

紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
 

 

チャディー・メン・タン「JOY オンデマンド」577冊目

マインドフルネスについて何冊か読んでるんだけど、瞑想を「ジョイ・オン・デマンド」って表現するのって軽くて面白い。深遠で難しそうな顔をしなくてもいい、瞑想を楽しんでいいんだよ、っていう著者の意図が伝わってきます。

瞑想はインドの昔の知恵だと思ってたけど、この本では仏教由来のものとして(あるいは仏教が興ったあとでどう瞑想が用いられてきたか)語られます。

簡単そうに見えるこの本ですが、著者は探求心が強くてどんどん仏教聖典をさかのぼっていき、日本の本もインドの本も、もう広く深く学んでいきます。真面目に読んでると、ああやっぱり瞑想って難しいんだ、深いんだ…としり込みしてしまいそうですが、実際はやってみて楽しさを知ることが大事なんでしょうね。もっともっと先に行きたくなるかどうかは、それぞれの人で違うし、違っていい。

しかし、こういう「マインドフルネスとは」ばかり読んでてもできるようにはならないので、入口のHow to本も読んでみよう。 

たった一呼吸から幸せになるマインドフルネス JOY ON DEMAND

たった一呼吸から幸せになるマインドフルネス JOY ON DEMAND

 

 

ケン・リュウ「母の記憶に」576冊目

面白かった。テッド・チャンを読み始めて(実はまだ読み終わってない)感動して、現代中国SFすごいぜ!と聞いたのでこっちも読んでみたわけですが、ほんと層が厚いですね。ケン・リュウも達者な宇宙SFを書くけど、彼は中国生まれということもあってか、三国志をモチーフに、ゴールド・ラッシュでアメリカに渡ってきた中国人とアメリカ人少女との交流を描いたりもする。時空を超えた書きっぷり。

昔、中国に憧れたときがありました。中国の昔の偉人たちの深みに。仕事で知り合った同僚たちの中には、すごく優秀で人格も素晴らしい人が何人もいたけど、流れてくるニュースを見てここ何十年も気持ちが離れてたけど、またあの国の文化や人々を見直すきっかけになるかもしれません。

日本で大ヒットしているものの中には、自分の殻にこもって出て行かないものがけっこうあると思ってます。小説にしてもマンガにしてもアニメにしても。優れてる点は認めるけど、外に出て行かないとわからない大事なこともあるから。

ここしばらく図書館が完全休業だったけど、やっと稼働を始めてくれたので、予約してた本が次々に出てきました。どんどん読まなきゃ!

 

スティーヴン・マーフィ重松「スタンフォード大学マインドフルネス教室」575冊目

マインドフルネスって何?ということを基本から知りたいと思って、借りてみました。日本の血を引く著者が誠実に著した良い本です。

マインドフルネスってのは瞑想の名前じゃなくて、考え方みたいなものなんだな。誰も権利を持つわけではなく、会員にならないといけないものでもない。そういうものって普遍的で良いけどいろんな理解をする人が現れて、いろんな流派が生まれそうな気もします。まずはできるだけ源流に近いところに触れて、本質を理解したかったのですが、この本でよかったかな。

さて、やっぱり瞑想に興味があるのでマインドフルネス瞑想に特化した本も借りてみようと思います。

 

江川紹子「「カルト」はすぐ隣に」574冊目

多分何かで紹介されてたから借りようと思ったのだけど、読んでみたらなんとも寝覚めが悪いほど怖い本でした。

「本当の自分」とか「絶対正義」や「絶対真理」を追究したいって、若いころはずっと思ってました、私も。勉強は嫌いじゃなくて、むしろ人付き合いが苦手で、どうして自分以外のひとたちはみんないい加減なんだろうって思ったりしてた。何度も裏切られた気になって、繰り返し繰り返し傷つくうちにやっと、人間ってもともとそういうもんなんだってわかってきて、争いごとも殺人も、愛がある限りなくならないって今ならわかる。でも心の奥に、全員が清純で澄み切った心の人ばかりで、誰も傷つかない天国がどこかにあるといいと思ってる。家で猫と遊んでる時が一番安心できて幸せ。私がカルトに走らないのは、カルトも全部怪しくて信用ならないと最初から疑ってかかってきたからだ。それだけ。違いは、自分で考えることを止められるかどうか。

自分で考えることをやめる「能力」。それって割と日常生活では重宝されてる。生徒がいちいち先生に食って掛かってたら授業は終わらない。夫と妻が毎日いろんなことの線引きを厳密にやってたらすぐにくたびれてしまう。

だから、大きい黒い網にからめとられてしまうかどうかは、本当に微妙。

私も、あえて人とつながろうとして、ここ数年はサークルみたいなものに入ったりして、それなりに重用されたこともあったけど、うさん臭く感じてるからか、どこか入りきれないでいると、急に「上の人」って攻撃に走るんだ。それでまた何度も痛い目にあったけど、それでもやってみて良かった。財産をとられたり人を攻撃したりするところに行かなければ、取り返しがつくうちに傷つくのは必要なことなのかもしれないと、今は思います。

たくさんの人に会って真剣に話し合って、傷ついて、それでも真実を見抜く気持ちは忘れないで…そう思います。