個人事業者の確定申告の本2種 664-665冊目

両方ともよい内容だったので、備忘録として書いておきます。両方とも成美堂出版でお値段も同じだけど、前者は「ムック」で4コマ漫画まではさみこんでいて、本当にわかりやすい。詳しくはないけど、私みたいに苦手意識が強くてとっかかりがわからない者にはありがたいです。

後者は一般書サイズで厚さがあって、事業開始の届け出から普段の帳簿のつけかた、おすすめソフトのリスト、固定資産のことや決算、確定申告までもっと詳しく書いてあって、これもまた良い本。ムック→単行本の順に読めば、苦手な人でもだんだんわかってきます。

私は図書館で去年の版を借りてきたけど、2020年度から控除額が変わったので、それ以降のものを読んだ方が、とくに初心者には混乱がなくて良さそうです。

帳簿…気が重いけどがんばろう。

「はじめてでもできる 個人事業者・フリーランス青色申告」(1430円)

「図解 いちばんやさしく丁寧に書いた青色申告の本」(1430円)

 

坂下千瑞子「がんになった人だけが知っている人生で大切なこと」663冊目

中年になると、友人や知り合いにがん経験者が何人もいます。私なんて、健康診断で再検査になっただけで眠れないくらいなのに、見つかってしまって、入院することになって、手術して…という心労は想像もできないです。何の気なしに、あるいは励ましたり慰めたりするつもりで、ひどく傷つけてないかと考えると、まったく自分に自信がもてません。

彼ら彼女たちの気持ちを少しでも知りたくて、借りてみました。この本にはおそらく、前向きにいることを選択した人が多く出てくると思うので、これだけで全てがわかるわけではないけど、せめてものスタートとして。

で、この本なのですが、全部当事者「サバイバー」のドキュメンタリーで、半分くらいマンガになってるので、とても親しみやすく興味深く読めます。シリアスなことだと思って苦手意識を持っている人にこそ、おすすめ。

みなさんが言っていることは、がん以外の病気やけがで生死の境をさまよったことのある人たちが言っていたことと共通しているような気がします。今日があるのは、明日がくるのはラッキーで、いつ何が起こって命が失われるかわからないから、今やれることをやろう、嫌なことをしないで楽しく暮らそう、ということ。

私は余命を告げられるような病気にはなったことがないけど、母が早く亡くなったりしたので、ずっしり胸に来るものがあります。

なんというか、世界はもともと素晴らしい場所なので、嫌なこと辛いことがなく、ありがたみを感じる気持ちさえあれば、今いるところが天国なんですよ。この気持ちをずっと持ち続けていたいと思います。

(2021年3月1日発行 1320円)

 

鎧淳 訳「完訳バガヴァッド・ギーター」662冊目

 「マハーバーラタ」は完全に現代語訳になっていたので面白く読めたけど、この本は古文調なので読み進めるのがキツかった、というか、結局最後まで眺めただけでした。むずかしすぎます。原文もご神託なのでおそらく全く分かりやすくはないと思うけど。

わかったことは、アルジュナ王子がクリシュナに質問をして、それに対して長い回答が続く、という問答集になっていることくらいです(読む前から知ってたけど)

ググったら、他にもっと読みやすい現代語訳が何種類かあることがわかったけど、もう一度トライする気になれないので、ギブアップということで…。

(1998年4月18日発行 743円)

 

チャールズ・ブコウスキー「パルプ」661冊目

なんてデタラメで痛快で面白いんでしょう。彼の作品の擁護者と批判者は、はっきり二分されるんだそうですが、擁護者のなかに「千年の愉楽」の中上健次がいて「なるほど」と思ってしまいました。

私はマジメで几帳面なところのある人間だけど、彼らの魅力が理解できてよかった。自分と違うから憧れる部分もあるかもしれないけど。これがこの作家最後の長編だなんて、もう老成とかハナからする気ないわけですよね。一生ブコウスキーのまま。誰がどう思おうと酒を飲んで女の尻を眺めて、仕事はしてもいいと思うときしかしない。なんというか、文才は絵画や音楽と同じように、めちゃくちゃまじめに努力した人だけでなく、破天荒あるいは自堕落な生活をしている人に降りてくることもある。

彼の文章が「いい」のは、破天荒で自堕落だけど文章自体は非常に端正で破綻がなく、読みやすくリズムが良く気が利いたユーモアがある。という意味でです。東大を出ようが京大を出ようが、文章がメタメタな人もいる。私は端正な文章を、よくよく推敲された文章を読むのが好きだ。それは「である体」と「ですます体」が混在していないかどうか、というようなことじゃなくて、作者の気持ちと虚構が自然に、だけどそれとなく区別されて書かれていたりすること。この本の場合翻訳が素晴らしいということも50%くらいあるんじゃないかな。

たまたま出会った作家が好きになるという幸せ。また読まなくちゃ。

(2016年6月10日発行 840円)

 

パルプ (ちくま文庫)

パルプ (ちくま文庫)

 

 

松下竜一「底ぬけビンボー暮らし」660冊目

敬愛する松下竜一の本、「ルイズ」とか「砦に拠る」以降読んでなかったので読み直し始めています。比較的新しいものも読んでみよう、かつ、会社を辞めて収入が激減したので「ビンボー」に敏感に反応した、というのもあります。(というか、今わたしは大節約ブームを楽しんでいる)

この本は、彼が一生出し続けた「草の根通信」というミニコミ誌に連載した生活のエッセイをまとめたもの。「豆腐屋の四季」の豆腐屋が”売れない作家”に変わっただけで、丁寧に不器用に愛情豊かに暮らす、この人の暮らしがつづられているのは同じです。豆腐づくりは大変な重労働だけど、書くことは彼にとっては辛い作業ではなく、受注待ちで暇にしている時間も長いので、彼は毎日愛妻と1~2時間も犬の散歩に出ては、河原の橋の下でゆったりとした時間を過ごします。豆腐屋を一緒にやっていたお父さんは寝たきりになり、入院し、やがて亡くなります。松下氏を慕って熊本からやってきた老人の世話をして、彼が元気になって戻っていくことも(名前は伏せていますが)忌憚なくつづられます。

短歌でまず認められた人の書く散文はやっぱり詩情があふれていて、幸せって身近にあるんだなとしみじみします。私も今は猫をひざに載せて、部屋に入ってくる風を感じているだけで幸せだなーと浸っていることが多いので、共感します。お金を必要以上に稼ぐことや、できるだけ立派な会社に入って少しでも上に行くこととか、ともすると”そっちの世界”にまた引っ張られそうになるけど、今いるところに踏みとどまっていこうって思える。

図書館のおかげで読みたい本はほとんど読めるし、VODやレンタルDVDのおかげで見たい映画は(待っていれば)ほとんど見られる。特別高い食材を使うのでなければ、食べたいものも作れば食べられる。絶対的な平穏が部屋の中には、自分の中には、ちゃんとある。

教科書に載った短編がいくつも収録されている「潮風の町」や豆腐屋を辞めて作家一本になった経緯もいつか読みたいなー。

底ぬけビンボー暮らし (講談社文芸文庫)

底ぬけビンボー暮らし (講談社文芸文庫)

  • 作者:松下 竜一
  • 発売日: 2018/09/12
  • メディア: 文庫
 

 

劉慈欣「三体2 黒暗森林(上・下)」658-9冊目

あー面白かった。

「三体1」を読んだのは2年半ほど前なので、相当内容を忘れてました。それ以上に、共通の登場人物が意外に少ない、というか、中心人物がほとんど入れ替わっているのが(私なにも覚えてないや、このまま読み進めて大丈夫かな)という不安材料になりますが、1のことはだいたいの設定と結末を覚えていればあとはシリーズものの別の巻くらいのつもりで読んでも大丈夫なのでした。

でも、とても複雑で難しい小説だと思うので、ちゃんと時間をかけて、ときどき前のページを繰ったりしながらゆっくりじっくり読むのがよし。

面壁者と破壁者という概念の発明がね、最高にスリリング。中でも、自覚のないまま面壁者に任命されてしまったチャランポランな科学者「ルオ・ジー」の存在が。

科学的にどれほど説得力があるのかないのかは、「1」だって荒唐無稽な大ぼら話なのでそこは騙されたつもりで著者の掌の上で遊ばせてもらうのがベスト。

もうすぐ「三体3」出るんだって?うーむ、次はなるべく時間を空けずに読みたいな…。

三体Ⅱ 黒暗森林 上

三体Ⅱ 黒暗森林 上

  • 作者:劉 慈欣
  • 発売日: 2020/06/18
  • メディア: 単行本
 
三体Ⅱ 黒暗森林(下)

三体Ⅱ 黒暗森林(下)

 

 

デーヴァダッタ・パトナーヤク「インド神話物語 マハーバーラタ」657冊目

ヨガも瞑想も、いろんな流派があって唱えるマントラも違うしアーサナの流れも違うんだけど、源流にあるのは「ヴェーダの知識」らしい。クリシュナというヒンズー教の神様の名前を唱える流派も多い。いったいクリシュナというのは何をした方なのか。ジーザスやブッダのことはうっすら知っていても、クリシュナのことはまったく知らないので、何を読めばわかるのか探して、この本を借りてきました。(でもこれじゃなかったのかも。確かにクリシュナは登場するけど、宗教上は”ヴィヤーサの叙事詩のうち第6パルヴァにあたるビーシュマという書に含まれる「バガヴァッド・ギーター」であり、その中でアルジュナがクリシュナにさまざまな教示を受ける”ということらしい。多分。(ほとんどまだチンプンカンプン)

私が借りてきたこの本にはさまざまな神や聖人や為政者が登場して、だいたいは相手を怒らせて恨みを買って、その次は相手による報復、その後は報復を受けた人の子孫による報復……という、血と因果応報の延々と続く物語らしい。旧約聖書みたいな…。

クリシュナは体の色が真っ黒で、微笑みを浮かべて誰でもすぐに魅了する大変な美男子だったとのこと。描かれるときに身体を青くしてるのは、本当は黒なんだって。インドでは、外のものを跳ね返すのが白、さまざまなものを受け入れるのが黒らしい。とりあえずはこの本でそこまでぼんやりわかってよかった。次は「バガヴァッド・ギーター」そのものを手配して読んでみよう。