安藤和弘「よくわかる音楽著作権ビジネス 実践編 6th Edition」855冊目

広い範囲を整理してまとめてあって、かつ、各章の冒頭のマンガでポイントがつかみやすい。実践編だけど初心者にも良い本だと思います。

知財にかかわる仕事を長いことやってるけど、途中何度も抜けたので、法律がどんどん変わってるし、一生関わっていこうという覚悟がなかったので、基本的なことをポロっと忘れてたりする。

たまにこういう本を、斜め読みでもいいから、一通り見ておくと安心。

初心者にも、実務家にもいいんじゃないかな。

骨董通り法律事務所 編「エンタテインメント法実務」854冊目

買う前に図書館で借りてみたのですが、必携だとわかったのですぐに買います。

エンタメ関連の法律解釈・運用に関して、福井先生をはじめとする骨董通りの先生方の信頼度は高い。交渉力が比較的低い実演家の立場をつねに配慮しつつも、レコード会社や放送局の立場も理解し、誰が相談しても納得できるおとしどころを提示してくれる、愛ある事務所です。

この本は百科事典のように、たとえば映画、たとえばゲーム、といったジャンルごとに、基本的な法律の解説から最近の裁判例、タイムリーな話題などを取り込んでいて、読んでも面白いけど、常に手元に置いて判断に迷ったときに参照したい本です。

500ページ近くあるけど、それでも足りない・・・全然足りない・・・。実務をやってると、法律の重箱の隅をつつくような微妙な案件がどんどん出てくるし、法律はこうだけど現実に許可を取りに行きようがない案件も多い。

第2弾、第3弾、ともっと出してほしい・・・。

莫理斯「辮髪のシャーロック・ホームズ」853冊目

これは面白かった!

ツカミが最高ですよね。シャーロック・ホームズものは最近かずかずのリメイクが行われていますが、辮髪は初めてです。

という引きが強くてさっそくページをめくってみると、「序」に昔の中国っぽい意味不明な漢語が並んでいます。くじけそうになって、先に著者と訳者の「あとがき」を読んでみると、かなり古風な中国語の文体であえて書かれていて、日本語訳でもそれを生かしたとのこと。演出か、とちょっと安心して、改めて読み始めてみたところ、わからない言葉が多いのをいったんスルーして読めば、どんどん頭に入ってきます。これは短編集なのですが、最初の作品「血文字の謎」には語の説明がさりげなく(いや、本当にさりげないんですよ)混ぜ込んであって、すぐに全部は覚えられないにしろ、少しずつ慣れていきます。

それにしても「もじり」が楽しい。ホームズだのハリウッドだの・・・。そもそも香港の地名には英語をあてはめたものが多いし。しばらく行けていない香港のあちこちの地名を見るのも懐かしく楽しい。

ストーリーも、トリックも、登場人物の性格付けも、じつにしっかりとして本格ミステリーに近いけど、茶目っ気たっぷりなのにクールを装ったような英国式?香港式?ユーモアもあって、最初から最後まで楽しんで読めました。これ映画化してもいいんじゃないかなぁ。英国人に化けても通用する長身のシャーロック・ホームズ役は、チャン・チェンがいいんじゃないかしら。辮髪必至だけどね!(中国語圏の映画、最近それほど見てないので、他のキャストは思いつかない)

全4巻になる予定とのこと。引き続き読んでいきたいと思います。

セーアン・スヴァイストロフ「チェスナットマン」852冊目

面白かった。翻訳もいいんだろうけど、ぐいぐい読ませる、確かな筆力のある作家だなと思います。

でもね、わたしは猟奇殺人は好かんのですよ・・・この本も、のっけから不必要に残酷な殺人があり、それに根拠を与える積年の恨みつらみが徐々に提示される、という構成。その辺に既視感があるし、理屈として成り立ってる気もするけど、人はそういう風に人を恨んだり殺したりするもんかな、という、納得できる心の動きを展開して見せてほしい、という気持ちも残ります。(アガサ・クリスティなら「非ミステリ」作品でも目が覚めるような人心の描き方をしてたなー、と思いだしてます)

本格ミステリ愛好者」からは、凶器の扱いが雑という感想が出るかもしれない。最近のバカ売れするミステリーって、最初からビジュアル重視というか、ドラマか映画にしたときの説得力とかエンタメ性を文章のときから意識してる印象がありますよね。この作者はもともと映像制作をしてた人だと聞くと納得します。

なんか、だんだん、ミステリーは本物の人間を離れて、架空の人間世界でアバターを動かしてるような感じになってきました。一方の現実世界の犯罪は、常に即物的で無計画に、けもののように行われている気がしてくる。

改めて、私が読みたいものは、こういう完璧なエンターテイメント志向ではなくて、泥臭くてご近所で起こりそうなものなのかな、とか思うのでした。

 

高木啓成「弁護士で作曲家の高木啓成がやさしく教える 音楽・動画クリエイターの権利とルール」851冊目

これは仕事用。まさに今必要な本なんだけど、読み切れなかったので、買います。そもそも、一度読んでどうこうじゃなくて、こういう本は手元に置いて、わからない点が出てきたときに参照するものですね。

ちゃんと読んでからまた感想書き直します!

日本SF作家クラブ編「ポストコロナのSF」850冊目

コロナ禍という状況が浸透してきた2021年4月の発行。なんともタイムリーで素晴らしい企画です。これね、19人もの作家(比較的若手が多い)が30ページくらいの短編を競作していて、大変読みごたえがあります。感染症が蔓延したあとの未来を描いてみたり、今そこで起こっているような事件を書いてみたり。

・・・しかしこれも残念なことに時間切れです。待っている人がたくさんいるので、半ばですが返却。最近どうしてこう、本にも映画にも没頭できないんだろうなぁ。そんなに忙しかったっけ私?

 

チャールズ・ブコウスキー849冊目「町でいちばんの美女」

ブコウスキーはこれで3冊目。とても短い短編がたくさん収録されている本です。

冒頭の表題作は、美しすぎるゆえに全く幸せになれない女性の悲しくも美しい話で、やっぱりブコウスキーはなんだかんだ言って女性愛の人だなぁと思う。

「人魚との交尾」は映画「つめたく冷えた月」の原作で、初めて読んだはずなのに、映画じゃなくこの短編そのものをかつて読んだような既視感。何だろうこの感覚。・・・いたずらで死体置き場から死体を盗んだ二人の男が、死体が若くて美しい女性だと気づいて驚き、「交尾」をしてしまって恋に落ちたようになってしまう。その彼女を二人で今度は海に流しに行く・・・という間じゅう彼らはどこかロマンチックでセンチメンタルで、とても美しいお話なんですよね。ブコウスキー、見苦しさの中の美しさ。

(今回、なぜか忙しくて延長したのに半分くらいまでしか読めなかった。次回、最後まで読もうと思います!)