鳥飼否宇「死と砂時計」1087冊目

これもどこかで推薦されてた本。架空の砂漠の国の、死刑判決を受けた人だけを収監した刑務所を舞台としたミステリーです。連作集の形をとっています。

もれなく死が待っているというシチュエーションで、場所や時間、道具立てには相当の制限があるのに、かなり自由な発想で書かれているので、最後に必ず「そう来るのか!」という驚きあり。納得感があったとは必ずしもいえないけど、面白かったです。

 

麻月りお「イケメン王子がいる水没寸前の王国で、日本語を教えることになりました!」1086冊目

日本語教師の方が書かれたとのことで、読んでみました。面白かった(笑)

ベタといえばベタな、”ふつうの私が王子様と”ストーリーだけど、水没寸前の遠い島国からのイケメン王子ってのが、なさそうでありそうで、なんとなく危機感を持って読んでしまうし、いい目の付け所だ!と思います。

日本語教師が、ちゃんと授業に来ない生徒にやきもきする感じや、志たかく、困っている生徒に頼まれるとがんばっちゃう感じも、”あるある”かもしれません。

これがデビュー作なのかな。面白いものを書かれる人だと思うので、日本語教師シリーズもっと書いてみてくれたらなーと思います。(今回の主人公の同僚とか。)

私はこの登場人物たちの親くらい(もっと上か!)なので、ああ若くて可愛い先生ならこれもあるかも、ないかも、と思いながら読みましたが、別の年代の他の先生の経験なんかも、いろいろ読んでみたいです。

宮島未奈「成瀬は信じた道をいく」1085冊目

つづいてこちらもAudibleで。成瀬は高校を卒業し、当然のように京都大学に通っています。女子大生となった彼女は「観光大使」になり、小学生の弟子を持ち、けん玉でテレビに出演し、「ゼゼカラ」の相方と再会。今回もあきれるほど予想外な規模の大冒険を真顔で繰り広げる成瀬。痛快で楽しいひとときでした。

しかしAudible、これほど面白い作品であっても、相変わらず爆睡力がすごいです。不眠症の人であっても薬やサプリ不要じゃないかというくらい、昼夜問わず寝かせてくれるのですが、どの辺まで戻せばいいかという加減がだいぶわかってきたので、もう寝落ちも怖くありません。

Audibleより「Audiobook」のほうが本の数が多いことに気づきましたが、この本などはおそらく同じ音源が両方に使われているようで、今あえて移行しようというモチベーションはありません。もうしばらく様子をみてみます。

 

宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」1084冊目

これもAudibleで。これはすっごく面白かったです。ナレーターが一人で語っているのに、成瀬とその親友 島崎、同級生の大貫や、成瀬に惚れる西浦少年とその友人 中橋。といった登場人物の口調や声音が明確に聴き分けられて、それぞれの人物像が生き生きと聞こえてくるんですよ。これはおそらく、文章の時点ですでに、彼らが立体的に実在の人間として個性を発揮しているからでしょうね。

まぁこの成瀬の面白いこと。200歳まで生きることを真顔で人生の目標として語り、思い立って親友とM-1グランプリに出場する成瀬。学校の成績は当然トップ、かるた大会でももちろん優勝を狙う。一切わき目を振らない。…空気読まない王者のような成瀬ですが、個人的には共感することが多すぎて…。

映画の感想とかでもいつも、自分の空気読めなさを申し訳なく思うとか、学生カーストって理解できないとか書いてる私です。それに思い立ったらわき目も振らないというのはこれまでの一生で何度言われたかわからない方なので、学力ほかの能力が足もとにも及ばないことを差し引いても、成瀬は空気読めない界のトップスターとして今後もどんどん書かれ続けてほしいと、同じ界隈の人間として切に思います。

「トップスター」という言葉を使いましたが、成瀬の言葉遣いは「私は膳所中学の成瀬だ。」みたいな男しゃべりで、宝塚の男役トップスターふうなのです。ドラマ化しても面白いと思うけど、まだ中学生~高校生であるにもかかわらず、頭の中の彼女は天海祐希とか珠樹りょうの立ち姿に似ています。成瀬は空気読めないけど繊細で人の気持ちを大事にするやさしい子なので、腹を割って話す相手とはずっといい関係を保っています。しかし、これだけ繊細な子が、空気読めないふしぎな成績トップ学生として長年くらしているのって、悪意の人々に心をズタズタにされたりしないんだろうか。親友と向かい合うとき以外の彼女の感情は、基本的にこの本では語られませんが、同じ空気読めない星のものとして半世紀以上やってきた私としては、彼女の本当の心の痛みが気になります。

ところで、Audible特有の経験の話をすると、びっくりドンキーで成瀬たちが食べるのが桃の「カフェ」と聞こえたので、何だろうと思ってググったら「桃のパフェ」だったりしました。「ゼゼカラ」の「ゼゼ」は、章タイトルになっているので「膳所」だとわかったり。逆に、「江州音頭」の江州が「こうしゅう」とかではなくて「ごうしゅう」だということは、音を聴かなければわからなかったな~。

とりあえず、成瀬シリーズは今後も読み続け、あるいは聴き続けていこうと思います。

 

雨穴「変な家2」1083冊目

間取り図を見ながら読むしかないこういう本まで、Audibleで聴けるのか!?という実験。

結果:図はPDFで添付されてるので、それを見ながら聴けば問題ナシ。

ただし、PDFは図だけを集めたものなので、文字と図を順を追って見ながら謎を解明していく紙の書籍と違って、ついついまだ見てないはずの次の図まで見てしまいがち。謎解き系の本ではあるので、そこは要注意…。

この人の本って、現実にありうるのか?という点でいうと、まったくありえないんだけど、独特の”わざわざ手間をかけてめっちゃ遠回りの隠しごとを何重にも行うかんじ”が、なんか面白いんですよ。ちょっとやそっとの富豪でも、わざわざ日本中にこんな建物を建てて不便な生活をしてもあり余るほどの金持ちはあまりいない。アラブのような大富豪は日本にはほとんどいないし、いても、わざわざ悪人になりたがる人なんていないので、普通はいいことに金を使って、尊敬されて好かれたいと思うのもんだ。SNSで叩かれまくってDisられまくるようなことを、正体追跡可能な形でやるなんて、ありえない。だからこそのファンタジー感。江戸川乱歩の時代のような規模感。

残念なのは私の短期記憶の弱さで、紙の本でも登場人物の名前や特徴をおぼえるのに時間がかかるため、途中でストップして前のほうのページをぱらぱらめくることがある。それがAudibleだとできない。でもこれって映画でも同じ。映画をVODで見るときは、ストップして公式サイトやWikipediaで人物確認をしてから映像に戻ったりするので、同じように途中で寄り道すればいいのかもね。

などなど。本を聴くこころみは、まだまだ続きます!

 

九段理江「東京同情塔」1082冊目

これもAudibleで聴きました。今度は…何度も、気づいたら爆睡してました。こういう、だらっと聞けない、密度の高い文章で書かれたもののほうが、集中を保つのが難しいんだ。言い訳だけど。もしかしたら、漢字で書かれたほうが、どの熟語なのかがわかりやすいかもしれない。あるいは、ひらがなで、カタカナで、あえて書かれていたのか。英語の部分は本を横にして読むように書かれていたのか。文字だけの本でも、ビジュアルが理解を助ける部分もある。

この本は、紹介文や感想を見ると、「ユーモアたっぷり」と書かれているものが結構多いようだけど、私は「皮肉きつい」と感じてしまった。かなりブラック。「コンビニ人間」の仲間、源流は筒井康隆のようなスラップスティックSFじゃないか。書いた九段理江は若い清潔な感じの女性だけど、50代のアクの強い女性を想像してしまった。

文字を見て読むのと、音だけ聴いて読むことの違いは、今後もぼちぼち比較していきたいと思います。

若林正恭「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」1081冊目

この本もどこかで紹介されてたから「読みたい本リスト」に入れてたんだろうな。あのオードリーの若林氏も、コロナ前にキューバアイスランド、+モンゴルに行ってたんだ。

私がキューバに行ったのは2017年の12月~1月。アイスランドは2019年8月。だいぶ仕事は違うけど、私もやはり職場でスピードや勢いに追われて苦しくなってた頃に一人でこの2国に出かけたので、本の中の著者のつぶやきや思いがものすごく身近に感じられます。年下の男の友人のブログでも読んでるみたい。人づきあいで大事なのって、どういうジャンルの仕事をしてるかとか、どれくらい稼いでるとかじゃなくて、同じ場所にどんな旅行をして、何を感じたか、何を考えたか、のほうですよね。その人と仲良くなれるかどうかは、そういうポイントのほうが圧倒的に大事。

同世代の学校や職場の知り合いにも、会社名で人をジャンル分けして終わり、という人がたくさんいた。xxに勤めてるから○○とか。「テレビを見るとバカになるから子どもには見せない」って平気で言う人もたくさん知り合いにいる。ジャンルで判断する人は最初から思考停止しているので、話してもぜんぜんん面白くないしエネルギーを失うことが多い。テレビにもアニメにもゲームにも、その人がいいと思うものは必ずあるんだよ。

「xxに勤めている人」って言われない仕事を始めてからは、名刺めあてになんとなく欲ばりな感じで近づいてくる人は消えて、今は優しく地味な心温まる生活をしています。足を引っ張る人も、デマを流す人もいない。だからもうキューバにもアイスランドに逃げる必要はない。

などいろいろ思い出してしまった。

タイトルを見て、キューバってそういえば変な犬がいたなーと思い出してました。たまにはこのブログに写真貼ってみます。なんか、シルエットがいぬってかんじじゃないの。

キューバで見たいぬ