難民三世のベトナム人少年と、外国人支援活動を自主的にやっている母を持つ日本人の少女。そこに「元」技能実習生たちがからんできて、日本の今のさまざまな問題を反映しています。
外国人忌避傾向のある人たちの中には、自国民の、特にエリートにだけ囲まれて育ってきて異質なものを劣ったものと認識する人たちのほかに、外国人の多い環境でトラブルをたくさん経験してきた人もいるんだな、と思いました。誰かが困っていると聞くと、自分に何かできないかとすっ飛んでいくお人よしの人たちは、どのグループからも自然発生するのですが(NPOや日本語教育にばかり関わってるとこのジャンルの仲間が増える)、忌避傾向の人たちとお人よしの人たちの考え方には、なかなかわかりあえない、交じり合えないギャップが存在するとこの歳になって気づく場面もあります。
エリート志向というと悪い意味に見えるけど、日本のさまざまな芸術や手工芸は、趣味をつきつめて生まれたもので、鋭い審美眼を持つ人から見れば、自分の命ともいえる審美眼がわからない人たちは忌避したいかもしれない。
昔友だちに、「あなたは人の欠落を愛するところがある。それでは幸せになれない」と言われたことがあって、何十年もたった今もときどき思い出すんだけど、彼女から欠落にしか見えないものが私にはバリエーションの豊かさに見えていたし、今もそういう逸脱をこそ大事にする考えが自分にはあると思います。
生き方から生まれてきた価値観を誰かの利害のために変えさせることは、難しいというか、できないのかもしれない。審美眼が命の人は、外国人が切磋琢磨の末にその人の審美眼にかなうものを生む、おめがねにかなう人になった途端、完全な仲間として扱い始めるのかもしれない。そうなることを期待してるのかもしれない。まあ、そういうケースはあまり多くないと思うけど。
私は欠落と自由と逸脱を愛するほうの人間だけど、つきつめたアートの、その最終作品だけを美術館で見て愛でることがある。作品を生み出すまでの40年50年の純粋主義まで理解してるわけじゃなくて果実だけを安く味わってる。アーティストから見たら、実にいい加減で腹立たしい鑑賞者かもしれない。
どの立場にある人も、自分と違う人たちのことを理解したり共感したりするのは本当に難しい。表面的にではなく、本質的な理解や共感を目指すと、難しさが身に染みる。ただ、今どんなトラブルが起こっているかを知ることや、自分と違う人たちの歴史を考える時間を持つのは少しは思いやりにつながると思う。そういう意味で、安易なおとしどころを与えようとしないこの小説はとても誠実だと思いました。






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