2023-01-01から1年間の記事一覧

高野秀行「西南シルクロードは密林に消える」986冊目

読み終えてタイトルを見ると、なかなか感慨深いなぁ。こういうの「エモい」っていうんですかね? 私も旅行するとき「飛行機で行ける日本のはしっこの島を制覇してみたい」とか「本国と旧植民地をめぐる旅をしてみたい」とか、ごく簡単にできることの中で、何…

井戸川射子「この世の喜びよ」985冊目

”今どきの若い子たち”は、芥川賞受賞作品は読まないけど、本屋大賞受賞作品は喜んで読む、と何かで読みました。これは多分、読まないほうの典型例なんだろう。起承転結が、山でいうと公園の砂場の山くらいの高低差で、ツカミもオチもないしショックも感動も…

高野秀行「怪獣記」984冊目

一日一高野秀行。 けっこう何冊も読んでるけど本来の本業?といえそうなUMAものは初めて。これ、他の本と比べるとあんまり私には刺さらなかったな・・・。なんでかというと、UMAにあまり興味がないから。私から見ると、UFOもUMAも存在するかしないかわからな…

高野秀行「ワセダ三畳青春記」983冊目

一日一冊、この人の本を読んでる。 これも面白かったなぁ~。のちに彼の妻となる人が彼の文章を「あなたの書く文章はすごく『粋』よ」と素敵なほめ方をしているように、この人の書くものは、どんなに汚いものを書いても不潔じゃないし、愛があるというほど大…

日本推理作家協会編「仕掛けられた罠(ミステリー傑作選)」982冊目

面白かった。アンソロジーっていいな、やっぱり。 最近はベストセラー情報を見たり、文学賞受賞作品を調べたりして、読む小説の幅は昔より広がってるけど、それでも全く知らない作家の作品を読んでみたくなることもあります。 高校までは地元の大きな書店の…

高野秀行「間違う力」981冊目

この人の本は全部面白い。ほんとに面白い。この面白さは、ドリフとかひょうきん族とか、バカバカしさの笑い(「ありえない!」)の中で育ってきた人が、どこかにずっと持ち続けて、待ち続けていた面白さじゃないかな?そして、一つ一つ実践して面白くなかっ…

ジェイムズ・リーバンクス「羊飼いの暮らし」980冊目

これも「一万円選書」の一冊。これは読むのに時間がかかった~。エネルギーも必要でした。この表紙にあるような穏やかでのんびりした雰囲気とは真逆の、苛烈なファーマーの生活が淡々と語られていて、その臨場感のおかげで読んでいるだけで一緒に消耗してし…

國友公司「ルポ西成」979冊目

「ルポ路上生活」を読んでから2か月くらいか。これも面白かった。こっちは著者がオドオドしていて(結局何でもやってるけど)(というか形容するうえで放送禁止用語がたくさん必要になる人が多すぎて危険)、なんとなくまだ腹が座ってないような印象。結びの…

北原保雄 編「問題な日本語」978冊目

最近ときどき日本語の変遷についての意見をどこかで読んだり見聞きしたりすることがあるんだけど、小さい頃の厳しい国語の先生たちとは違って、「言語は変わっていくものだ」「俗語や、当初は誤りとされた読みが定着して正しいものと見なされることは歴史的…

小学館文庫編集部「超短編!大どんでん返し」977冊目

面白いわ。やっぱり面白い。しかも短い。”ツイッター小説”(これからはX小説と呼ばねばならないのか)よりは多分長いけど、文庫本を手に取って読もうという気持ちで向き合うとあっという間。短いけど、物足りなさは皆無。従来のありがちなミステリーやロマン…

ブレイディみかこ「スープとあめだま」976冊目

ブレイディみかこが幼い子ども(といっても小学生中高学年くらいから?)に向けて書いた絵本。絵は「ぼくはホワイトでイエローで、ちょっとブルー」の表紙と同じ、多感できれいな目をした少年の絵。 この子がある雪の日、母親に連れられてホームレスをシェル…

国際言語学オリンピック日本委員会「パズルで解く世界の言語」975冊目

超面白い!超難しい!全然解けない! だってヒエログリフの解読とかあるんですよ。これパズルというか、暗号解読ですらなくて、未知の言語体系を解き明かすという、知的好奇心の果てのような体験です。いや、解きやすいようにすごい専門家の方々が組み立てて…

毛受敏浩「人口亡国」974冊目

コンビニに行くたび、日本に外国人労働者は不可欠だと思う。その割に移民問題をあまり知らない、理解してない人がほとんどで、ちょっとバランスがおかしいと感じる。 この本は、そういう「何もしらないけどお世話になっている人」が現状を把握し、今後どうす…

ホルヘ・ルイス・ボルヘス「ボルヘスとわたし」973冊目

ボルヘスの短編集は何冊か読んでるけど、このタイトルになっている短編「ボルヘスとわたし」が読みたくて借りてきました。あまり他の短編は読んでないけど、今回はこれでいったん返却予定。 どうしてもこれが読みたかったのは、以下のように連なって現れてき…

NHK放送文化研究所「NHKが悩む日本語」972冊目

面白かった。辞書を編纂している飯間浩明のツイートや文章と比べると、従来の”正しい日本語”を守る傾向が強い、保守的な印象。飯間氏の仕事は「わからない言葉を調べるための書物」を作ることで、NHK文研の仕事は「だいたいの人がわかり、自然と感じる言語を…

小川哲「地図と拳」971冊目

大河ドラマだった~~。 満州国っていう、日本の中枢にいた昔の人が勝手に夢みた国の歴史をたぐり、こんなことやあんなことがあったんじゃないかと想像して書かれた物語だった。 数々の窮地を逃れてきた主人公が、ふいに没する場面がちょくちょくある。年代…

頭木弘樹「NHKラジオ深夜便 絶望名言」970冊目

この本は素晴らしい! 世の中って、なにかネガティブっぽいことを言うことがタブーのような”空気”が強くて、そうなると常にポジティブであれという重圧に耐えて笑い続けなければならなくて、もう生きていること自体が辛くなっていく、というおそろしい悪循環…

大江健三郎「水死」969冊目

すごく面白かった。と書くと、最新のブログや動画が面白かったのと区別のつかない貧しい表現になってしまうけど、気軽に読み始めたのに謎の要素やストーリーの先が気になって、続きを読みたいから早く帰宅する。厚い本だけど、電車やバスに持って乗る。 一目…

坂口安吾「不連続殺人事件」968冊目

坂口安吾は「堕落論」の人、という印象が強かったけど、日本屈指のミステリーを書いていた!という話を聞いて、ワクワクしながら読みました。 戦後すぐの日本の文壇は、こんなに乱れていたのか・・・?と思うほど、異常に入り乱れた愛憎関係。それがとある山…

山口雅也「奇偶」967冊目

(ネタバレ?あります) あえてミステリーではなくSF枠で登録します。これはなかなか難解というか、難しい言葉をたくさん使っているけれど、要は量子力学(01ではなくその間のどこかに存在する)とかシュレディンガーの猫という問題をぶわっと膨らませて、ボ…

ジョン・アップダイク「アップダイクと私」966冊目

ニコルソン・ベイカーの「U&I(アップダイクと私)」を読んで、そこから本物のアップダイクに来た。(これにもおおもとの「ボルヘスと私」があるとは知らなかった。読まなければ!) これエッセイと書評を集めた本で、「アップダイクと私」は、作家として注…

レンタルなんもしない人「レンタルなんもしない人というサービスをはじめます」965冊目

これも読んだ。ずっとTwitterをフォローしているので既視感があるけど、ときどきレンタルさんの家族のことなど、知らなかった情報もあります。 受検は、なにかのゲームにムキになるみたいにがんばった記憶があるけど、就職や転職活動は私も心底イヤだった。…

タラス・シェフチェンコ「コブザール」964冊目

不思議なことに、表紙にも目次にも作品解説にも、シェフチェンコのファーストネームが出てこなくて、年譜のページにやっと登場する。それくらい、シェフチェンコといえばこの人なんだろうな。ウクライナの偉人として広く尊敬されているらしい、画家で詩人の…

青山美智子「赤と青とエスキース」963冊目

これもだいぶ前に「一万円選書」で選んでいただいた本。 こんな人生があったらな・・・と想像して書かれたファンタジーだと思うけど、童話みたいに「若い二人は結ばれました、めでたしめでたし」ではなくて、紆余曲折もあり、なぜか二人は結婚せず子どもも持…

綾辻行人・歌野晶午・法月綸太郎・有栖川有栖・我孫子武丸・山口雅也・麻耶雄嵩「7人の名探偵」962冊目

面白かった・・・どれも面白かったのに、頭から最後まで読み終えた今、「ぬえの密室」のことで頭がいっぱいになっている。他の小説のことは全部抜け落ちてしまった。この本当っぽい短編、すべて実在する登場人物たち、いったいこの短編(のアイデア)は存在…

レンタルなんもしない人「レンタルなんもしない人のもっとなんもしなかった話」961冊目

この続編が出ると聞いて、そういえばこの2冊目読んでなかったと思って読んでみました。やっぱり面白いな~ この頃からTwitterをフォローしてて、ドラマ化されたときもドラマと並行してツイートを読んでたので、臨場感あります。でも見てなかったネタも多い(…

吾妻ひでお「失踪日記」960冊目

「ルポ路上生活」の中で何度も言及されていたので、これも読んでみました。吾妻ひでおの描く女の子ってすごく可愛いなと子ども心に思ってたけど、ちょっとお下品系のエッチなマンガや、逆にすごくとんがったSFはまだ理解できなくて、普通の学園ものとかずっ…

芸術新潮2023年5月号「追悼総力特集 坂本龍一」959冊目

雑誌の感想を書くのも変なかんじですが・・・この特集は素晴らしかったです。編集者も寄稿者も祈りを込めて作っていたと思うので、この特集が「追悼特集」となってしまったときの落胆や悲しみまで見えてくるようです。 アート関連の雑誌って「美術手帖」とか…

「山口雅也の本格ミステリー・アンソロジー」958冊目

この本って・・・本物の暖炉がある、昔ながらの居心地のいいホテルの談話室みたいだ。ホテルの経営者と職員とで長年丁寧にメンテしてきて、そういうのが好きなお客さんしか来ない。そこに集う人たちには暗黙の了解があって、ずっと守られている暖かい親密さ…

國友公司「ルポ路上生活」957冊目

すごく面白かった。考えさせられたというより、自分の物差しが一瞬グラっとした。それと、この実験は誰かがやってみる必要があったので、やってくれて本当に感謝するし、この経験は広くいろんな人に見てほしいと思う。 特に、路上にいる人たちを怖いと思って…