2023-01-01から1年間の記事一覧

坂本龍一「ぼくは、あと何回、満月を見るだろう」1015冊目

坂本龍一のことを私はたぶん、自分とかより”進化した人類”、目指すべきもの、と思っていて、どうやっても近づきようのない高みにいる存在だった。バッハとかモーツァルトみたいな。こんなに早く、ろうそくを吹き消すみたいにいなくなってしまって、ぽかんと…

今井むつみ・秋田喜美「言語の本質」1014冊目

見た目もタイトルも、おそろしく地味。ためにはなるけど堅くてあまり面白くない本・・・に見えます。最初のほうは私もそう思って読んでいました。私は言語にふだんから興味のある方だから、オノマトペだけでぐいぐい読めるけど・・・って。 書きぶりも、面白…

うかうか「それゆけ犬HK」1013冊目

NHK、それも大河とか朝ドラじゃなくて、「ドキュメント72時間」とか「100分de名著」とか語りだす人、たまにいます。「ピタゴラスイッチ」と「みんなのうた」が好きな人とか・・・料理と体操が好きな人とか・・・ この著者もきっとそういう人なんだろう。だっ…

國友公司「ルポ歌舞伎町」1012冊目

あー面白かった。著者のTwitterで、この本がAmazonプライム会員なら「読み放題」(つまり追加料金なし)で読めることを知ってすぐにKindleにダウンロードし、あっという間に読み切ってしまいました。 この人の本は、やくざの世界をやたらと残虐に、あるいは…

矢内東紀「ChatGPTの衝撃」1011冊目

なんて退屈な、特徴のない、木で鼻をくくったような文章なんでしょう。・・・というのが正直な読み心地です。「えらいてんちょう」の本は何冊も面白く読んだのに、あの率直でエモーショナルな語り口はどこにもない・・・なぜなら、これは彼が自分で書いたん…

夕木春央「方舟」1010冊目

どこかで推薦されてるのを見て、読んでみました。新しい動機とトリック、巨大などんでん返し。 こういう、さっきまで仲間だった人が次々に死んでいくミステリーって、いくつになっても慣れない部分がある。純粋にパズルとして解ければいいのになぁ。あるいは…

高野秀行「イラク水滸伝」1009冊目

やっと読み終わった。この本も面白かった~。サクサク楽しく読めるけど、ページ数でいうと470ページもあるのだ。読後はまるで自分も「ディシュダーシャ(長衣)」と「チャーヒーエ(頭巾)」、「イガール(黒い輪)」を着用してタラーデ(手作りの木の舟)を…

マリアーナ・エンリケス「寝煙草の危険」1008冊目

装丁がまず綺麗。蛾は苦手だけど、この本の中の世界の不思議な美しさを象徴していますね。 カズオ・イシグロが激賞しているという、新進気鋭のスペイン語文学の作家は、アルゼンチンの女性らしい。文学界のロック・スターだ、ホラー・プリンセスだ、とも書か…

早川書房編集部・編「世界短篇傑作選 天外消失」1007冊目

読むのに時間がかかってしまった。 昔の翻訳なので、舞台っぽいというか、若干口語に今より誇張が多くて少し読みにくい。そこが魅力でもあるので、楽しむためには読むのがゆっくりになってしまう。トリックも、「それアリかよ!?」のテイストが最近の、たと…

「地球の歩き方BOOKS 世界のかじり方 世界のレシピBOOK」1006冊目

これは・・・良い本だ。パラパラ眺めても楽しいし、材料をチェックするのもいいし、何より、実際に作るためのレシピがしっかり載ってるのがすごい。本場の味が再現できそうだけど、思ったほど手間がかかりすぎない。材料も、日本で入手できる??と心配にな…

中村安希「N女の研究」1005冊目

フルタイムの仕事を辞めてから、興味があっても今までは遠くから眺めているだけだったNPOのいくつかに実際に顔を出すようになって、若くてキラキラした女性たちが生き生きと働いているのを何人も見ました。中には高学歴の帰国子女と思われるバイリンガルで仕…

ハヤカワポケットミステリ「51番目の密室(世界短篇傑作選)」1004冊目

余暇に読むのはやっぱりミステリーですよ。11月はじめの連休前に借りて、結局ズルズル1週間くらいかけて読みましたが。 もともと1973年発行の「世界ミステリ全集」18巻に収めた37篇の短編を、小分けにして出し直したもの。これは2010年の発売だけど、作品の…

小梅けいと・アレクシェーヴィチ「戦争は女の顔をしていない(コミカライズ版)」1~4 999~1003冊目

この本はずっと気になっていたけど、原作を読むのをずっと躊躇してました。事実の重さに耐えられる自信がなくて。少女漫画として描かれたものなら、少なくとも、残酷さを強調することはないだろうと思って、やっと重い腰を上げてみた次第です。 文字で読むの…

見坊行徳・三省堂編修所 編著「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」998冊目

あー面白かった。読む前は、流行語やサービスの移り変わりを反映した削除語を集めたものだと思ってたけど、同じものの言い換えによって見出し語が変わったものがあったり、性的な俗語が一掃されたり(編集趣旨の変化によるものらしい。小僧どもがそればっか…

地球の歩き方BOOKS「世界のすごい巨像」997冊目

久しぶりにこのシリーズ読みました。楽しい~~~ どでかいものって、なんかこう惹かれますよね、圧倒されるというか。先日、青森の十和田現代美術館で巨大なおばさん(ロン・ミュエク作「スタンディング・ウーマン」)に会ってきました。ものすごく普通の白…

中村安希「インパラの朝」996冊目

この本もまた「一万円選書」のなかの一冊。冒頭でつまづいて、最初の30ページを読むのに半年以上かかってしまった。読み終えてみると、彼女の目で中東やアフリカの地べたの風景を見たような実感があるけど、最初はすごく自分で自分を見つめて書いたエッセイ…

山口貴大「年収300万円FIRE」995冊目

似たようなタイトルの本、たくさんあるなー。もっと、一人暮らし女性向けとか、生活が困窮している人向けに書いたものがあってもいいと思うけど、読む余裕もないから書かれないんだろうか。 要は「若いうちはできるだけ稼げ、どんなに稼ぎが増えても生活レベ…

津村記久子「水車小屋のネネ」994冊目

いい本だな。好きだな。 ここ数年、けっこう本を読んでるつもりだけど、この人の本は初めて読んだ。原作が映画になった「君は永遠にそいつらより若い」は地味に好きだったけど、その世界とこの本の世界は地続きなかんじがする。 たくさんの傷ついた少年少女…

千早茜「しろがねの葉」993冊目

いいお話だった。 家族を亡くした一人の幼い少女が、銀堀りの男に拾われて、誰よりもたくましく生き抜いていく一代記。読後感が切ないのは、彼女は才覚に恵まれていたのに、”女だてら”の英雄にはならず、静かに生きて消えていく者たちをただ見続けて送り続け…

伊坂幸太郎「マイクロスパイ・アンサンブル」992冊目

伊坂幸太郎読むの久しぶり。基本おもしろいはずなのでかなり期待して読んだけど、これはちょっと特殊な、猪苗代湖でのイベントのために書かれたもので、小説として全体の緻密な構成とか完成度を目指して書かれたものではなかった。 でも著者がTheピーズとTom…

村田沙也加「となりの脳世界」991冊目

面白い・・・しみじみ面白い。やっぱり面白い。 学校の先生は厳しい規律を強いておきながら「自由な発想をしなさい」「独自の考えを言ってください」という。もともと発想や考えが自由で独自な人は、規律に自分を合わせるのが難しい。両立させがたいものだと…

木下洋一「入管ブラックボックス」990冊目

渋谷区の図書館の入荷を待ってすぐに予約を入れたけど、なかなか順番が回ってきません。一方たまたま立ち寄った新宿区の図書館で、「新着図書」コーナーに誰の予約も入っていないこの本があったので、すぐに借りてきました。あとで調べてみたら、渋谷区の所…

高野秀行「幻獣ムベンベを追え」989冊目

とうとう高野さんの原点にたどり着きました。早稲田大学在学中に行ったコンゴの怪獣探索の旅。 これもいちいち何もかも面白い・・・けど、目的にやはり共感できず、「納豆」ほど熱中して読めなかったな。(※納豆に熱中するほうがマトモだと言うつもりはない…

温又柔「私のものではない国で」988冊目

リービ英雄のデビュー作も読んだ記憶があるし、最近では李琴峰にはまった。どんな文学者が書いた日本語の作品も、自分とは違う言語センスを楽しめるけど、母語じゃない人たちの、私が使っている日本語からの逸脱はもっと大きくて、意外で、美しく感じられる。…

村田沙也加「信仰」987冊目

やっぱりこの人の本は面白い・・・ なんというか、読んでいると時空がちょっと歪む。自分自身の感覚はともかく、「常識的には世の中ってこういうものだよね?」という見方があるとして、それに対して”色メガネ”以上の、万華鏡を通して世の中を見ているような…

高野秀行「西南シルクロードは密林に消える」986冊目

読み終えてタイトルを見ると、なかなか感慨深いなぁ。こういうの「エモい」っていうんですかね? 私も旅行するとき「飛行機で行ける日本のはしっこの島を制覇してみたい」とか「本国と旧植民地をめぐる旅をしてみたい」とか、ごく簡単にできることの中で、何…

井戸川射子「この世の喜びよ」985冊目

”今どきの若い子たち”は、芥川賞受賞作品は読まないけど、本屋大賞受賞作品は喜んで読む、と何かで読みました。これは多分、読まないほうの典型例なんだろう。起承転結が、山でいうと公園の砂場の山くらいの高低差で、ツカミもオチもないしショックも感動も…

高野秀行「怪獣記」984冊目

一日一高野秀行。 けっこう何冊も読んでるけど本来の本業?といえそうなUMAものは初めて。これ、他の本と比べるとあんまり私には刺さらなかったな・・・。なんでかというと、UMAにあまり興味がないから。私から見ると、UFOもUMAも存在するかしないかわからな…

高野秀行「ワセダ三畳青春記」983冊目

一日一冊、この人の本を読んでる。 これも面白かったなぁ~。のちに彼の妻となる人が彼の文章を「あなたの書く文章はすごく『粋』よ」と素敵なほめ方をしているように、この人の書くものは、どんなに汚いものを書いても不潔じゃないし、愛があるというほど大…

日本推理作家協会編「仕掛けられた罠(ミステリー傑作選)」982冊目

面白かった。アンソロジーっていいな、やっぱり。 最近はベストセラー情報を見たり、文学賞受賞作品を調べたりして、読む小説の幅は昔より広がってるけど、それでも全く知らない作家の作品を読んでみたくなることもあります。 高校までは地元の大きな書店の…