本)ミステリー

歌田年「紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人」738冊目

すごく面白かった。「紙鑑定士」「伝説のプロモデラー」という、マニア心をくすぐるプロフェッショナルたちのオタクトークに”ふむふむ、ニヤリ”、「えっ」というようなエピソードの連続。だけど、文章がこなれていて読みやすい。登場人物たちが、美形であっ…

アリスン・モントクレア「ロンドン謎解き結婚相談所」737冊目

新刊リストを眺めていたらこの本を見つけて、タイトルと表紙に惹かれて読んでみました。第二次大戦直後のロンドンの、廃墟の中に残ったビルの4階で”ロンドンで2つめの”結婚相談所を始めた若くて美しい二人の女性。一人は元スパイで、もう一人は夫を戦争で…

サイモン・シン(青木薫・訳)「フェルマーの最終定理」721冊目

あー面白かったー! 本を読んだだけなのに、まるで自分がその世紀の証明にずっと立ち会ってきたみたいに、祝杯を上げたくなっている。ロールプレイングゲームで、アンドリュー・ワイルズと数名の最後まで協力した勇者(数学者)たちと一緒にチームを組んで、…

早川書房編集部・編「早川書房創立70周年記念コミックアンソロジー★SF編/ミステリ編」630~631冊目

早川書房が創立70周年を記念して、過去の「SFマガジン」と「ミステリマガジン」に掲載された、古今東西の偉大なるまんが家の短編と、このために書き下ろしたものをまとめた作品集。手塚治虫に松本零士に石森章太郎に萩尾望都、吾妻ひでおにとりみき…もう、す…

ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」615冊目

ミステリーであり、ひとりの女性の壮大なドラマであり、湿地の物語でもあります。 全体的にはファンタジーだと思ったほうが良さそう。親や兄姉に次々に去られて、学校にも行かずひとりだけで自活しながら美しく成長し、学者たちを驚愕させる自然誌のベストセ…

アーナルデュル・インドリダソン「厳寒の町」609冊目

この作家の、日本語翻訳の出てる作品、これで読破だ! 陰鬱な風景、暗くて覇気のない登場人物たち、根深い人間関係が根幹にある犯罪を特徴とするこのシリーズ。今回は移民の人種差別問題に焦点が当たります。 2019年夏にアイスランドで現地ツアーに参加した…

アーナルデュル・インドリダソン「湖の男」608冊目

これが4冊目。前の3冊にも増して、さらに読み応えがありました。 想像したこともなかった冷戦時代の北欧。アイスランドについ最近までアメリカ軍が駐留していて、ソ連に対する重要な軍事拠点だったことも知らなかった。東ドイツのライプツィヒに、アイスラン…

アーナルデュル・インドリダソン「声」604冊目

この作家の日本語訳、3冊目。このシリーズは書き続けられてて、すでに日本語訳があと2冊出てるようですね。 これもまた、失意のうちに命を奪われた人の人生の物語でした。読んでる最中も、読み終わったあとも、残念な気持ちでいっぱいになるけど、なんという…

アーナルデュル・インドリダソン「緑衣の女」602冊目

これも「湿地」同様、陰鬱で愛と思いやりにあふれた人間たちのミステリー。とても力強い文章で、引きつけられてぐいぐい読みました。湿地のときは、犯人の時系列と操作の時系列を並列にした映画のほうが共感しやすいと書いたんだけど、この本は最初から並列…

東野圭吾「マスカレード・イブ」601冊目

たまたま手に入ったので読んでみました。キャラクター設定が「いかにも」なところはあるけど、面白い。トリックも珍しくはないけど、いろんな部分をキャラクターの魅力で補ってます。 これ、キムタクと長澤まさみで映画化されたんですよね。キャラクターは合…

アーナルデュル・インドリダソン「湿地」600冊目

寡聞にも知らなかった、北欧ホラー台頭のなかにアイスランドの作家もいることを。さらに、その代表的な作家の作品が映画化されてたことも。友人から聞いてさっそくこの映画を見てみたんだけど、映画の感想のなかに「小説のほうが良かった」という人が多かっ…

ビル・クリントン&ジェイムズ・パターソン「大統領失踪 上・下」527-528冊目

センセーショナルなタイトルですよね。みんながよく知ってるビル・クリントン元大統領が「書いた」小説ってことで。 実際読んでみたら、すごく読みやすく楽しめる、大衆サスペンス小説という感じで、これは明らかにジェイムズ・パターソンというベストセラー…

森晶麿「ホテル・モーリス」520冊

1時間半くらいのドラマくらいの重さ、かな。面白く読めたけどノリが、私はちょっと年を取りすぎてるかも・・・。 ホテルが舞台と聞くだけで、ちょっとわくわくします。非日常のときめき、初めて会う人たちにちょっと緊張しつつ、ちょっと背伸びして接する感…

芦沢央「火のないところに煙は」510冊目

どこかで書評を見て、面白そう〜、怖そう〜、と思って借りた。 面白かったし怖かったけど、ちょっと脈絡をつけようとしすぎてる気がしました。「リング」「らせん」・・・一連のあのシリーズみたいに、どんどんルール変更が行われていく中で、あとの方の巻で…

柚木麻子「BUTTER」506冊目

(ネタバレあり) わりと変わった小説だなぁ。 冒頭から最後まで、なにかとバターに寄せた話の展開になっていて、もうエシレバターを固まりで買ってきてバクバク食べたくてたまらなくなります。 乳製品会社のパンフレットに連載された小説(バター販促品)と…

恩田陸「夜の底は柔らかな幻」上・下478−479冊目

面白かったけど、ダークファンタジーを読みたかったわけじゃないので、微妙。「イロ」が超能力の一種で、「途鎖」が土佐の同音異義国の異境だということはすぐわかったけど、「ソク」って何だったんだろう。何も説明しないで放置、ってのが恩田式なのかな。…

恩田陸「ユージニア」477冊目

これも重層的な、いろいろな人たちの言い分が出てくる小説なんだけど、ちょっとオカルトっぽい方向に行き過ぎてる気がします。いやでもそれが神秘的で惹かれるんだけど。ミステリーというには美少女ロマンが強すぎるかな、と。 ディストピアじゃないの。暗い…

恩田陸「中庭の出来事」476冊目

面白かった。立体的な織物みたいに、重層的に進んでいく物語。あっちのお話とこっちのお話が関係していたり、あの人の話とこの人の話が違っていたり、ということが作者はとっても好きなんだな。普通に聞いている話が途中から化けていく「・・・え?」という…

一色さゆり「神の値段」464冊目

書評かなにかで見て、図書館で借りられたらいいな〜と思って調べたら、たまたますぐ借りられてよかった。ギャラリーで働く若い女性が主人公で、幻の(生きているかどうかもわからない)アーティストと、ギャラリーを取り巻く不思議な人たちの世界を見事に描…

山口雅也「ミステリーズ」441冊目

珠玉の、抱腹絶倒の、短編集。1990年初頭にさまざまな雑誌に書かれた短編を集めたものだけど、Disc 1&2に別れて構成されていて、洒落ています(本当はこの年代の作家ならレコード盤の「Side A&Bにしたかったはずだけど、微妙にCDが幅を利かせてきた時代だよ…

有栖川有栖「江神二郎の洞察」440冊目

面白かった。この人の作品の一番力が入ってるところはいつも、「全員がアリバイがあるように見えるのに、犯人だけが殺人を犯すことができた。それは誰か、そしてどういう理屈か?」だと思う。動機を描き出すために長い背景を語ることが絶対必須ではないので…

有栖川有栖「鍵のかかった男」439冊目

これは2015年に書き下ろしで発売された作品。今までで一番読みやすかった。大人らしい抑えた文体だし、”鍵のかかった男”が重層的で興味をそそられます。宝くじ当選とか事件に巻き込まれるとか抑えた文体とか、私の敬愛する佐藤正午を少し思い出しました。 ミ…

有栖川有栖「月光ゲーム」437冊目

この作家のファンではないし、与えられた謎を真剣に解くこともせずに、ただ気軽に読んでるだけなんです、すみません。でも面白かったよ。3部作の中で、これが一番小説として楽しく読めた。まだ大学生の空気が作者に濃く残ってたからか、その場にいて自分も…

京極夏彦「魍魎の匣」436冊目

読んだー!重かったー!(※物理的に)1048ページ。いやー面白かった。最初は、旧仮名遣い文が混じるし、霊能者とはなんぞやとか、魍魎とはなんぞやとか、長い長い説明が面倒な気がしたこともあったけど、どんどんはまり込んで、後半は夢中で読み進みました。…

有栖川有栖「孤島パズル」435冊目

大学生の江神探偵シリーズ第2作。先に読んでしまった「双頭の悪魔」が第3作なので、順番間違ってる。しかし「双頭の悪魔」が分厚い力作すぎて個人的にはめんどくさかったのに比べると、こちらの方がシンプルで人間関係も納得しやすかったです。いくらトリ…

風間一輝「男たちは北へ」433冊目

1989年に発刊された小説ですが、グラフィックデザイナーを本業として、そのほかに飲み歩き関係の記事などを雑誌に書いていた筆者が初めて書いた長編小説だそうです。表紙カバー裏の写真をみると、ウイスキーらしきグラスを手にした無頼っぽい男で、野坂昭如…

有栖川有栖「双頭の悪魔」432冊目

この人の作品を読むのは久しぶり。本格的推理小説、「フーダニット」(犯人当て)の名手。以前は結構好きだった気がするんだけど、今回はそれほどはまらなかったなぁ、「このミステリがすごい!」人気リストを見て選んだんだけど。大人になりすぎてしまった…

水原秀策「サウスポー・キラー」431冊目

ミステリーなんだけど、完全に野球小説ですね。バタバタ人が死んだり、残酷な手法だったり、どろどろの人間の醜さを描いたりする怖いミステリーが多いこの世の中で、ほっとする作品でした。 この作品も、トリックの複雑さや動機の難しさがメインではなくて、…

ジェフリー・ディーヴァー「ボーン・コレクター」429〜430冊目

文庫本とはいえ上下巻あって、なかなかのボリュームでした。最初の誘拐の場面の後、首から下が麻痺した探偵という設定が理解できるまでに結構時間がかかってしまった。なるべき事前情報を見ないで読み始めるので、こういう苦労をしてしまうんだけど、これが…

浅倉卓哉「四日間の奇蹟」428冊目

とても丁寧に書かれた小説で、優しくて細やかな人が書いたんだろうなと思った。小説のなかで起こる「奇蹟」は美しい。面白い小説だった。けど、奇蹟が発覚して以降のヒロインが泣きすぎる・・・。元々それほど生に執着していなかった女性でも、パニックに陥…