伊丹敬之「経営戦略の論理」

同じ著者による「ゼミナール経営学入門」を2/3くらい読んだところでこっちを読み始めて、「ゼミナール」の方は結局最後まで読まないままになってます。「ゼミナール」の方が、厚い本だけどずっと楽に読める。文章が平易だし、基礎に徹しているからでしょうか。「論理」の方はとっつきにくく、さらっと一読しただけでは頭に入ってこない。でも苦労して読むと、びっくりするくらい、うなずける。2回読むと、すーっと実感できる。

最初の印象としては、とにかく、書いてあることすべてに筋がぴしっと通っている。論理的な無理や矛盾がみあたらない。だから納得して、ふむふむと読める。ビジネス書といえば翻訳もの、てかクリステンセンしか読んだことのないわたしでしたが、データを徹底的に分析する、科学者的な印象のあるクリステンセンと異なり、この著者は徹底して論理追求型です。文脈や行間に隠れたヒントを見逃さずに、真実を追究し続ける、という印象を受けました。

こういうアプローチをとると、ふつうの人間ならどっかでつまづくもんだ。どうしても、自分が思いついたことが正しく思えて、それと異なるものを排斥する心理が働いてしまって、論理に無理が出てくる。一方立派な先生ってのは、自分を正すことに余念がない。全く「自分は偉い」的なことを言わないし、学生の言うことが自分の意見と違っていたら、きちんと解き明かして、採り入れるべきところは採り入れる。そうやってどんどん、自分の考えが充実していくわけだ。

明晰な人だ、と思う。あいまいさがなくて、まっすぐだ。この本に書いてあることは、「答」だ、と思う。経営者はみんな、本当はこの通りにやればうまくいく、やらなければならない、と思ってるんだけど、そう簡単には実現できない。

もしかすると、成功する経営の定石ってのは、たとえば中国の昔の学者の時代から不変なんだけど、それをうまく言い表せる人が少なかったのかも。それをうまく実現できる人も少なかったのかも。思うに、うまく実現するには、現実の世界のなかの不確定な要素が多すぎるから。