ニール・ガーシェンフェルド「考える『もの』たち」48

48冊めで年越しだ。 これ に続いて、ニール氏の本をもう一冊読んでみました。こっちの方が古くて、1999年に書かれています。「ものづくり革命」は2005年だから、6年前ですね。この人、いま注目してるんですよ。ものづくり関連で。あと、中村伊知哉 とか。 でも、この本はほんとうにニール氏の雑感の寄せ集めで、あとに出版された「ものづくり革命」の方がまだテーマが絞れてるというのが感想です。あっちは少なくとも「どんな人でも自分のほしいものをすぐに作れるキカイ」というものに絞って書いてある。一方こっちは、「ウェアラブルPC」や「スマートマネー」ということの概念について描かれている部分が多いんだ。 スマートマネーという章では、株や為替や先物取引によって得られる利益や損失というカネは、労働で得た1ドルでパンを買うといったカネと性質や価値が異なるので、数値上だけのカネとモノであるカネとを区別しようというようなことを言ってる。・・・書くならもっと本気で、経済学者と組んで現状分析にコストやリソースも費やして、みっちり研究し尽くしてから自分は何を提案するかまで書いてほしいんだ。エッセイを読むつもりでMITの教授の本を買ったわけじゃないんだぞ、こっちは。 あとさ、基礎研究を楽しく続けていると、だんだん世の中のニーズから遠ざかることがある。この人たちはMITのメディア・ラボで、「作るのが楽しい」ものをただ作ってるだけじゃないの?という風に見える部分があるんだなぁ。これが実現したら、いま困ってる人たちがどんなに喜ぶか、どんなに助かるか、という視点って大事なんじゃないかと思う。(cf.必要なものを作る・・・三鷹光器会長) p32-34 ハーバード大学のワイドナー図書館は、世界で唯一、世界共通の分類に沿って分けられていない。それは分類方法が確立する前にできたからだ。これを電子化できたらすごい、と書いてある。その後GoogleやMSがやった電子化にこの図書館は含まれていたんだろうか。ハーバードは含まれてたハズだけど。 Googleからここにリンクしてあったけど、ワイドナー図書館が含まれるかどうかは書かれてませんね。ふつうに考えると含まれると思うけどね。 p54 ヨーヨー・マとのコラボ。弓の動きを感知する高性能センサーをたくさんつければ、チェロ本体がなくてもチェロが鳴らせる、というもの。「彼は自分の腕を演奏してみせた」これはもしかして、有名な「人間チェロ」?・・・と思って調べたら、たぶん違った。人間チェロはナムジュン・パイク、というかフルクサスという人たちでした。・・・フルクサスって何? p134 カオス理論というものを理解しない人たちがみょうな使い方をして、言葉が独り歩きしている、と説明する箇所で、正しいカオス理論の例として、『天気予報が当たらないのは、予報官が賢くないからではなく、天気を予測するのが根本的に不可能だからだ、という驚くべき可能性が提起された』だって。そんな大変な理論を使わなければわからなかったんだろうか。 天気という結果を引き起こすファクターが特定されて、それらの因果関係も特定されたら、少しは予測可能になるかもね。いまの天気予報は、星占いと同じで「当たるカモ」ってところで。 天気ってのは数式じゃなくて「人の運命」とか「地球の未来」に近いものなんだから、予測可能だという前提で研究を始めること自体がナイーブ過ぎるんじゃない?えらい学者さんってのは時に、当たり前のことを難しく研究したがるものだ。 p160 同様に、人工知能の可能性について語る部分で、「問題は、目も耳も口も不自由なコンピュータには、世界を理解する可能性がないということだ。」つまり、人間が五感のすべてでインプットを受けているのと同じものをコンピュータに与えることはできないから、人間の脳に近いものを作るのはまだ当分難しいって言いたいみたい。・・・これをいうために何十ページもついやしてて、冗長。 ・・・って感じで、どうも現実から遠く離れてるところがある。私は日本の中小企業が食って行けるようになるためのテクノロジーの話がしたいんだよ~~。 以上。