古田マリ「仕事の設計図を描く」69

企業勤務の後に一級建築士となった著者が、設計という仕事から見出した「うまく仕事を進めていくためのヒント」を、それ以外の仕事一般に適用するためのさまざまなアイデアを披露しています。

たとえば。建築という仕事は行き当たりばったりではできない。常に完成図を立体的に想像したものを頭のどっかに置いておいて、それを実現するために、ここにドアを置くとか、壁を塗る前に配電を整理するとか、一つ一つのプロセスを決めていく必要がある。そのバーチャルモデルをうまく描けないと、例えば: まずここに駐車してそこから入って、あっちで着替えて奥のジムへ向かう、といった動線がスムーズでないマズイ建物ができてしまう。しかも、一番長い時間をすごすジムでなく、駐車場だけが公園の緑に面していたりする。全体を描けずに、細部から始めてしまう人の作業はどこかで頓挫する。全体を思い描き、今の自分の作業がどこに位置するかを理解し、ひとつひとつに時間や労力をかけすぎずに、プロセスを通過することを重んじる人だけが、ゴールにたどり着ける。・・・そんな風なことが書いてあります。(かなり自己流の解釈)

かなり自己流の解釈をしてしまう理由は、バカでもわかる10大ポイント!みたいなのは書かれていないからです。私みたいなシンプルな人間は、1冊を5行で説明できるような太い柱みたいなものを常に欲しがるのですが、むしろこの本はリニアに頭から最後まで読んで何かを読み取る、という感じで書かれています。

立体的な発想の重要性とか、完成した建物(プロジェクトでも同じ)だけが大切だということとか、プロセスは要所要所だけを押さえろとか、なるほどと思える点も多い本でした。文庫本だから軽く読めるよ。読んで、これを自分の仕事にどう生かすかを考えてみるとよいかもしれません。