とうとう時代物に手を付けてしまいました。
この人の作品がイイということは知ってましたが。
なんていうか・・・クリステンセンは読んでも本田宗一郎の本は読んだことがない、というようなもので、心温まる翻訳ものの小説は読んだことがあるが時代物は読んだことがありませんでした。
短編集です。いずれも、舞台を現代に置き換えることが容易にできるテーマをもっていて、感情的にも理性的にもすーっとスムーズに入ってきます。リストラされたガチガチの元エリートサラリーマンが、家族や再就職先の人々のぬくもりによって、人間らしさを思い出していく・・・とか。むしろ、現代のたとえば東京が舞台だと、瑣末な事実にこだわってしまって「そんなんあるわけないだろ!」みたいな突っ込みに終始してしまうおそれもある。舞台が江戸時代だから、寓話色が強くて、その分エッセンスがよく伝わり、受け取る側にもこだわりがない。
いずれもしっとりと暖かい読後感のある出来のよい短編でした。
・・・さて、次はもうちょっと毒のあるのが読みたくなってきたな。