宮永博史「ひらめきを生む発想術」99

「セレンディピティ」で去年全国の書店のビジネス書売り場を賑わした、宮永博史氏の新作です。

セレンディピティ」と「ひらめき」は、似てるようで違う。セレンディピティは目の前で起こる「幸運な偶然」という事実で、ひらめきは頭の中で起こるアイデアの発現、だと思います。イメージとしては、セレンディピティのおかげで特許を取った vs いいアイデアがひらめいたので事業を起こした、って感じで、どうも前者は理系的・科学的、後者は文系的・ビジネス的な印象が強いけど、必ずしもそういう枠にはめられるものではありません。

宮永氏はいずれも、普段の不断の努力や好奇心や積極的な行動によってチャンスを増大できると説き、今回もたくさんの事例でわかりやすく説明してくれます。

今回も本のタイトルはHow-to本っぽいけど、基本的に読者に対して、自分で実例から学べ、と語りかける本です。事実とヒントはたっぷり与えられるけど、考え方を自分のものにしなければ「ひらめき」を生むことはできない、という一貫した姿勢がみられます。

とりあげた実例には、社会人大学院の学生が足で集めてきた日本の中小企業の事例も多数含まれていると、あとがきに書いてあります。成熟産業がひしめく日本で、価格競争に陥らずに自社だけの強みを確立して事業を成長させていくことは、並大抵のことではありません。すぐれた個人の例もあげられてますが、マネして1回くらい自分もひらめけるかな、とは思っても、自分が彼らに太刀打ちできる人物になれるとは思えません。でも企業ってところは、みんなで力を合わせて作り上げていくものです。三人寄れば文殊の知恵と申します。この本の事例を読んで、勇気付けられる会社員もたくさんいるんじゃないかな~。

「中小企業の成功事例集」にとどまらず、そこから何を学ぶべきか、というポイントを加えて、体系的にまとめられているところが、さすが大学教授という感じです。しかも今回も楽しく気軽に読める。

年末年始の帰省の車中にオススメです。きっと駅や空港の書店で売ってると思うんで、手に取って見てみてください。