桐野夏生「ジオラマ」103

例によって、人間が誰でも持っている暗い、いやらしい部分だけをいろいろとピックアップして、いろんな風に展開した、短編集です。読まなきゃよかった、と思いそうになったけど、それほどでもないのは、バラエティな暗さが細切れで楽しませてくれるからでしょう。この人の長編は、読み終わると登場人物の重荷を引き受けてしまって、立ち上がれなくなります。

桐野夏生ってさ・・・ひとのカサブタをはがしてそこを突く、みたいな人だよね・・・。

どの人にも美しいところもあるんだけど、そこは見ない。「蛇にピアス」の・・・金原ひとみか。あれを読んだときもそんな風に思った。

赤い髪の常軌を逸した女、階下の部屋に住む女におぼれていく、倒産した元銀行員。

「どうして千恵に夢中なのかなと思って」と男。

「あなたが骨の髄まで銀行員だからよ」と女。

、、、このフレーズが、頭にみょうに残ってるんだなぁ。

陰と陽のバランスなのかな。誰の心にも明るいところと暗いところがあって、みるみるうちに落ちていく人と、落ち始めても踏みとどまろうとする人がいる。明るいところを歩き続けられる人ほど、自分の暗さや弱さを知って見切ってるのかもなぁ。私は、踏みとどまろうとしてオタオタする凡人だな。電車で人の流れをうまくかわせずに入口にへばりついてるオバサンみたいなものかも。

うーむ。なんで読んじゃったんだろう・・・。

以上。