本多孝好「FINE DAYS」119

表紙はモダンでシンプルなイラスト、一見したところ夏の海が舞台の女子中高生向けの小説のようです。

中身も、目立たないけどちょっと変わった男の子と、カンの鋭い美少女が授業をさぼって屋上でタバコを吸ってたりして、青少年小説の様相がたっぷりなのですが、ミステリです。ほろ苦いというより五臓六腑にしみわたる苦さ。

でも青少年小説でもあります。若さというものの危うさ、後悔、切なさ、美しさ、といったものもちりばめてある。人に見せる顔は醒めていたり愛想がよかったりしても、身体の中にどろどろしたものを持っている、現実の若者の琴線をびみょうに刺激するものがありそう、だけど、結論として暗すぎず全体的にクリーン。で、帯には「掘北真希も共感」。

高校生の夏に、教室の窓からぼーっと校庭を眺めて運動部の掛け声を聞きながら考え事をしてた、みたいなリアルな時間がよみがえってきます。年取ってから懐かしむ「高校生」じゃなくて、先生を逆恨みしたり転校生にオカルトっぽいバックグラウンドを想像したり、狭い学校の中しかまだ知らない少年少女の危うい心理がよく描けてます。

キレないコピーライターなら「青春は、大人たちが思うほど甘くもすっぱくもない」とか表現しそうな感じ。

わりと好きです。以上。