千々岩英彰「色彩学概説」156

ビジネスの勉強をしているうち、今後重要なのはデザインだ!という話になってきたので、これからしばらくはアート系の本を読んでいく。3月に入ってから関連の本を4冊読み終えてこれは5冊目なんだけど、これからも興味深いものがあったら感想を書こうと思う。

この本は、色ってものについてきちんと考えたことがなかった自分にとって、非常ーに興味深い内容だった。目の構造や太陽光の構成から始まり、色彩学を学問として研究した先人たちの歴史が一通りカバーされている。著者自身の研究結果も大量に収められている。色彩学ってのは生理学であり、物理学であり、心理学であって、はなから学際的なのだ。

眼球から入って脳に至る信号の感じ方を生理学的にいくらやっても、色そのもののことはわからない。でもプリズムで分光しても、ぴっちりとしたデータが出てこない。ものすごく揺らぎの多い、分析しづらい分野なんだな。そうなると多数の人を集めてアンケート調査をするしかなくて、膨大な調査結果が取り上げられているところは立派なんだけど、そのデータの解釈が若干ムリがあると思うところが多い。たとえばターゲットが世界中の大学生だけだし、日本の古代の色の好みと現在が異なる可能性について触れたりしていない。

しかし、おおざっぱに「現在の世界中の人々の色や配色の好みは7割は一致していて3割はローカルで異なる」という結果は、今後念頭に置いておくといいのかもしれない。その3割をどれくらい重視すべきかは状況で異なるだろうけど。

色の好みは「欧米と南米」「東アジア」「東南アジアと南アジア」の3グループに分けられ、配色の好みは「日本や韓国」「フィンランド」「中国やロシア」「欧米」に代表される4グループに分けられるという。ここまで分けちゃうと、各国の誰にアンケートを取ったか、その好みが平面・立体・環境、ファッション・プロダクトデザインなどのどれにもあてはまるのかどうか・・・等々、疑いたくなる部分もある。たとえば、中国の学生があざやかな赤を強く好むことと、中国でお祝いの席にあざやかな赤がひどく多用されていることは、赤が好きだからよく使うのか、いつもめでたい席で使われるのを見て育ったから好きになったのか。

現実にいる洋服のセンスのいい人やメイクの上手な人が、色彩学の勉強をしたとは限らない。本1冊読み終えてみて、日本に3つも4つもあるカラーコーディネーター検定の類と、この本で書かれた色彩学の歴史と、関係があるのかないのか、あるとしたらどの検定はどの人の理論に基づいたものなのか、あるいはもっと新しい理論を元にしてるのか、気になってきた。こんなに分析できない物事に関する感覚を、どんな根拠で合格不合格を決めてるんだろう。でもおそらく、1級合格者はインテリアやファッションのコーディネイトに実際に配色のルールを生かしてるはずで、そういう日々実践レベルの色彩学のことも知りたい。古本で100円くらいで買える昔のテキストを取り寄せてみようかな・・・。

以上。