小池昌代「裁縫師」160

友達に薦められて読んだ。

どの作品にも、一見とても平凡でまじめで目立たない人たちの”物狂い”が描かれている短編集。物狂いというのはここでは、狂気のようではなくシラフで冷静だけど、その人のある一部分だけが常軌を逸した方向性に走り出して止まらなくなった・・・という様子のことを表してるつもり。

たった9歳の女の子が仮縫いの途中にそのまま裁縫師に押し倒されてしまうというシチュエーション、自分の幼いころのその記憶をたどりながら黙々と掃除を続ける年老いた掃除婦。というのが表題作のモチーフで、そういう女性らしいファンタジー(nearly equals 物狂い)がちりばめられています。

発想は面白いんだけど、なんか読んでて照れる。「そこでそう来る!?」と考えさせちゃう隙がある。「(私はそのとき)9歳の娼婦であった」なんてこと、書かなくてもこちらがそう読みとるようであってほしいんだ。有無を言わせずぐいぐい引き込んでほしい。

てか私はなにを本ばかり読んでるんでしょう。他に仕事とかやることもいっぱいあるんだけど・・・。

以上。