中村伊知哉「『通信と放送の融合』のこれから」186

Q:この人は何なんだろう?

A:京大出の元官僚で、その後MITや慶応の教授になった人。ただし「少年ナイフ」というパンクバンドのディレクターをやっていたことがある。

世間的にはこの「ただし」以下の意味がわかる人の割合は少ないのかも。”ポップカルチャー”の中身もわかる文化人”にしても、よりによって少年ナイフってところがどれだけ特異だか。

解説:少年ナイフってのは関西の普通のおばさんがやってるパンクバンドです。(私はわりと好きです)素人っぽいけど、その音楽の屈託のない楽しさが世界的にヤケに受けて、アメリカの当時の最先端の音楽シーンで熱狂的に受け入れられました。ポップカルチャーの輸出の大成功例でもあります。彼女たちがニルヴァーナの前座でツアーに出たのは90年代だから、かなり先を行ってる感があったし、度肝を抜かれました。

中村氏がこのバンドの具体的に何をしてたのかわからないけど、そういうコアでアングラで濃いところにどっぷり浸っていたことは確からしい。官僚を経て大学教授になり、日本の通信や文化の政策を語る人の中に、語られている文化の中身を本当に体感できている人は少なそうだけど、もし中村氏こそが少年ナイフをUSへと展開して成功させた立役者なら、この人が政策に関わってることに意義があるかも。

でこの本ですが、1章はお得意のポップカルチャーについて語り、2章では通信と放送の融合政策について意見を述べ、3章では法律改正フレームワークの提案、4章ではそのための人材育成(子供向けと慶応KMD)の話です。やわらかいのは1章と4章で、2章3章は官公庁のサイトからダウンロードしたように硬い。今の、特に放送・通信関連の法律はとてつもなく複雑で一貫性がないことや、コンテンツ・サービス・ネットワークという横軸で分けた法体系にすべきということは、基本的に同感です。難しいと思うけど、私もこれからしばらくWatchしてみようと思います。以上。