福井健策「著作権の世紀」208

新書で200ページ強。カバンに入れておいて、移動時間や待ち時間にとぎれとぎれに読んでもOK。専門用語をほとんど使わず、きわめて平易な文章で、法律論をさけて今世界で起こっているさまざまな事象を紹介し、それらの置かれた状況を解説した本です。

著者はネットでも紙の上でも積極的に執筆を続ける著名な弁護士ですが、知らずに読むと弁護士じゃない人の本みたい。これってすごくほめてるつもり。法律家の書いた本の中には、文章が硬すぎて、苦手な人は逃げ出しそうになるものもあると思うけど、この本は本当に気軽に読めます。

著者がさまざまな新しい音楽やアニメやネット文化にも関心を持ち、それゆえにそれぞれの魅力や弱点を理解してるのも重要なポイントです。

今後の著作権法のあるべき姿について安易に結論を出さず、自論を展開してそっちに導こうという偏りもなく、むしろさまざまな主張を紹介して、「判断するのは読者自身」という姿勢を徹底しています。なにか単純な答が欲しくてこの本を買った人は不満かもしれないけど、法律って「大勢でみんなのために決めたルール」でしかないので、これが現実だということを思い知って、当事者意識をもってみんなが苦労して考えることが大切ではないか・・・と、著者はしずかに訴えているようです。

・・・しかしほんとに法律ってぐちゃぐちゃだなぁ。いくら努力しても、どうにもならないんじゃないの?と、考えるのを辞めたくなる瞬間もありますが。

この著者の講演会とかナマであったらぜひ聞いてみたいと思いました。以上。