桐野夏生「残虐記」213

週末、気分転換に軽いミステリーでも・・・って読むもんじゃないですね、この人の本は。

タイトルからしてキッツイけど、実際のところ、「柔らかい頬」より「グロテスク」より、私の読後感はまだ軽かったのですが。

25歳の工員が10歳の少女を誘拐、監禁して、1年ちょっと後に解放された、という事件から25年。そのときの少女が小説家として名をなしていたが、刑務所を仮出所した犯人から手紙をもらって、家を出てしまう。残された原稿に書かれたのは何か・・・。

この小説の9割以上がその原稿なのですが、その「小説家となった少女」の妄想がどんどこどんどこ繰り広げられて、いつもながらすごいです。今朝「日曜美術館」でとりあげていた「パリで開催中の日本のアール・ブリュット展」と重なって感じられました。どんな人の中にも、負のエネルギーとか妄想とか、いろんなものが隠れてるものなんじゃないかと思うけど、ことばという形で出てくることもあれば、絵や粘土細工になることもある。整理されて口当たりよくなってることもあれば、生々しくてとげとげしてることもある。

出せてる人は出せない人よりは健康だと私は思うのですが、自分はぜんぜん出せてない気がするので、今年もこれを何らかの形で放出することを目標としてみます。以上。