林信行「iPadショック」219

iPadの発売に合わせて書かれた本、つまり、日本で発売される前に書かれた本なので、”日本でどのように使われているか”は書いてありません。また、感動とかすごいとか未来とか、割り引いて読むべき表現も多いです。でも知らなかった情報がたくさん得られたので、読んでよかったと思います。

たとえば。

USではiTunes Storeで動画が売られてるが、日本では売られてないので、動画機能の印象が異なる(p49)。TV番組なら1本200円、1シーズン2500円くらい。映画は24時間でデータが消えるiTunes Movie Rentalなら1本300円くらい。・・・この違いは日米の著作権法の違いにも起因してるのに違いない。最近初めて音楽著作権の処理に関わるようになって、システムの複雑さ、自由のなさにヘキエキしてます。どうしてこう複雑怪奇なシステムをみんな鬼のように使っているのか。このシステムのせいで、坂本龍一作の起動音がWindowsに入らなかったのか・・・なんて思ってしまいました。

iPadは出版、ラジオ、テレビが融合するメディア」という章では、iPad上でインターネット上のサイト、テレビチャンネル、書籍を同じレベルでザッピングできると書いてあります。PC/ケータイ側から攻めるのがiPadで、TV側から攻めるのがGoogle TV? 私は今でも小説は紙で読みたいけど、「読む」んじゃなくて「引く」ための本、つまりレポートやペーパーを書くための参考書籍は、テキスト検索ができたほうがいい。新聞はちょっとかさばりすぎると思っている。チラシはいますぐ全廃して配信してほしい。etc、使い分けが必要だと思ってます。USには著作権切れの本を読めるiBooksってサービスもあるらしい。

ほかに、恥ずかしながら私はHTML5とかWebKitのことをほとんど理解してなかったので、シロウト向けに簡単に書いた章があってよかったです。(ご存じない方は、wikiなどをご参照になるとよいと思います。)iPadと関連してIEやWindwosのことを悪く言う人がいるけど、改めてマイクロソフトって会社はユーザーが欲しいと言ってくるものを愚直に作り続けてしまったように思います。これから開発されるであろうWindows上のアプリがすべて動くプラットフォームを作るとか、いままでのバージョンのWindowsで動いていたアプリがすべて動く新バージョンを作るとか・・・。Appleの「俺(Jobs)がいいと思うものしか作らない」というやり方なら、一貫性とイメージを保てて、意外とそれで商品が嫌われることは少ないのかもしれません。

iPhoneのハードウェア原価についても書いてありました。(p202)2008年の3G モデルの原価は172.46ドル、約1万7千円(アイサプライ調べ)だそうです。これを約8万円で売る。これと同様の「原価が安い」話をiPodが出た時からずっと聞いてるってことは、Appleトランジスタラジオみたいに小さいiPodを皮切りにガジェット市場を切り崩してきて、iPhoneで携帯、iPadでそろそろネットブックあたりの市場が崩れてきそうになってるのかな、と思います。

さて、もうすぐ「iPadビジネススタイル(仮)」って本が発売されるらしいので、出たらそっちも読まなきゃ~♪

以上。