アンジェラ・カーター「ブラック・ヴィーナス」227

1991年のロンドンの書店の店頭は、この人の最新作「Wise Children」の素敵なポスターで埋まってました。”ジャケ買い”してから表現が豊かすぎて読み進むのに苦労したけど、geriatric charlestonなんて風に医学用語が面白い使われ方をしてたりして、最後まで夢中で読んだのをおぼえてます。

その翌年に亡くなってたんだなぁ。どうりで新作の話をまったく聞かないはずだ。その後も何冊か原書を買って帰ったけど、最後まで読んだのは1冊もなし!なぜWise Childrenだけ読めたのか思い出せません。

Black Venusも原書は10年以上前から持ってるけど、訳書があると知ったので楽な道を選んでしまいました。

表題は、詩人ボードレールの愛人だったとされる黒人娼婦を1人称の主人公とした短編。(1人称だけど、ときどき3人称のナレーターが出てきて解説をします。)なんか瀬戸内寂聴さんが日経に連載してる「奇縁まんだら」みたい。アンジェラさんも寂聴さんもとてもセクシュアルなものを書くのです。ボードレールとか伝説の猟奇殺人の犯人とか、有名人を取り上げて彼らの生と性をリアルに想像して描く。私二人とも大好きなので言っちゃうんだけど、妄想力がすごいのです。すごく、おんなって感じ。気まぐれで生き生きとしていて、残酷でキラキラ輝いてる。アンジェラさんの本を読むと、世界がおもちゃ箱で自分は怖いもの知らずの子どもになったようで、マタタビを嗅いだ猫のような元気が出ます。

他の人にこの本を勧めますか?(外資系企業のWebアンケートみたいだが)と聞かれたら、「うーん、小説好きな女性になら」って答えるかな。好みが分かれると思うので。まず自分が読破したいもんです。92年以降新作はもう出てないわけなので、そう難しいことではないはず・・・。買ったままになってる本を引っ張り出してくるかな・・・。