林芙美子「放浪記」230

旅行には旅行記を持っていくことにしてます。今回はこの本。昭和44年発行の、河出書房新社版「日本文学全集」の第31巻です。親が買って期待したのに誰も読まないまま放置されていたもので、40年たった今でも手を切るほど新しい。そんなものを海外まで持って行ってあちこちのカフェや機内で読んでた光景は、もしかしたら妙だったかもしれません。 放浪記って本は、漂泊の作家 林芙美子がフランスでの暮らしをつづった本かと思ってました。でも実は、自分の半生をかなり赤裸々につづった私小説だったのですね。とじ込み付録で作家の壺井繁治が、放浪記の中で自分が「洗濯ダライを金も払わずに持って帰った話が書かれているのに吃驚した」と書いてるくらい事実に基づいてますが、登場人物がそういう批評文を書いてるリアルタイム性が面白いです。 解説で山室静も書いてますが、「放浪記」はたしかに初期の作品らしく、数奇な半生をそのままつづった印象で、みずみずしくてとても面白いけど圧倒される筆力!!みたいな迫力ではありません。というわけで、続いて最晩年の傑作「浮雲」を読みます。。