池井戸潤「下町ロケット」306

佃は大田区の町工場の社長だが、大きな失敗に巻き込まれたため以前働いていた宇宙開発機構を辞めて親の会社を継いでいた。最大手クライアントから契約を切られたところに、大企業から特許訴訟を起こされて青息吐息。実力派の弁護士によって苦境を切り抜け、経営を立てなおしつつ、今度はロケットエンジンの主要部品に関して特許ライセンスか部品供給かという岐路に立たされる…。

感想:おもしろかった。1日で読んでしまいました。

まさにMOT=Management of Technologyの世界、というか、授業でよくやったようなビジネスケースを小説化したものという感じです。キーワードは中小企業、町工場、大企業に負けない技術、買収、特許戦略、訴訟、夢、手作業、現場…etc。

ただ、一時期そういう世界にあまりにもズブズブに浸っていた(ケースを何十個も読んだり、工場見学に通ったり)ので、題材に新鮮味は感じませんでした。個人的には。

実際、この小説のような会社って本当にたくさんあるんですよね。工場見学に行ってお話を聞いてゾクゾクしたことが何度もありました。一方、この小説に出てくる大企業側の特許担当者たちの考え方もわかるところがあります。持てる者のほうが失うことを恐れるのが、人間の性なのでしょう。

技術屋あがりで弁理士・弁護士と資格をとっていった「神谷弁護士」のモデルは、実在するようですね。以前自分で仕事をした中にも、技術がわかって正義感が強く、丁寧な仕事をする弁護士や弁理士がいたなぁと思いだしました。きっとますますご活躍されていることでしょう・・・。

直木賞受賞作品だけあって、ドラマ化されたら盛り上がりポイントがたくさんあって面白くなりそうです。離婚した妻が最後にもう少しからんでくるかな?と思ったらそうでもなかったので、テレビではこれを膨らませたりするのかな~。

以上。