岡田斗司夫+福井健策「なんでコンテンツにカネを払うのさ?」323

これも、twitterでいまフォローしている福井健策氏の新著。というか"オタキング"岡田斗司夫氏との対談です。

二人ともかなーり異端な意見の持ち主で、突っ込みどころも多いが思い切りのいい持論を気持ちよく展開してくれます。

副題が「デジタル時代のぼくらの著作権入門」。といっても入門書では全然ありません。むしろ大学院課程を終えたくらいの人が、思考実験サンプルとして読む本だと思います。

福井氏が、本だけでなく映像や音楽のすべてをアーカイブ化して、著作権者からオプトアウト方式で許諾をとる(これを有効にするにはまず法改正)という「全メディアアーカイブ構想」をぶちあげると、岡田氏は日本の全国民が株主になる「株式会社日本コンテンツ」を語りはじめる…。あるていど制度上の難しさがわかる人のほうが、壮大な夢であり大言壮語のこの話が思い切り楽しめるのでは?と思います。

この二人は、立場は違うけれど意外と考えもアプローチも似ていて、日本人にはむずかしい"大きなシステムをデザインして構築する"力のある人たちだと思いますが、意図的に人間の心理に触れてないからか、な~んとなく、自分が彼らの提唱する世界にぴたっとはまる気がしません。具体的にいうと、売上トップ100のすぐれた作家やミュージシャンと同じくらいすばらしいアマチュア作家やミュージシャンがたくさん存在することは知ってるけど、一般の人はいちいち1万人の本を読んだり音楽を聴いたりして選択するより、誰かが適当に選んでくれたものの中から選べれば十分なんだと思います。"キュレーターの時代″でも"目利きの力"でもいいし、それが中村とうようでも芥川賞でもロッキングオンでもいいんだけど、膨大な横並びのアーティストの中から、数個を選び出して提示してくれるものがふつうは必要な気がします。全アーカイブスができると、その中に「目利き」が必要に迫られて登場して、やがてそれがレーベルに似た役割を果たすようになって、それをマネタイズする必要が生じてきて、そのうち意外と今とかわらない世界になっていく気がします。

お金を稼ぐための仕事をしながら音楽を続ける…ということを、私もよくミュージシャン希望の人に薦めますが、実際のところは、2つのことに真剣に取り組める人ばっかりではないとも思います。聴く側はもっとそうで、もうダンスミュージックのコンピレーションCDで十分だと思ってる人もいるくらいです(私はとってもpickyなので、うそ~と思ってしまうほうですが)

多分わたしは何においても、「一般の人は、たいがいのことはどうでもいいと思っている」という考えなんでしょうね。私自身、ウルサイのは音楽くらいで、それ以外のことは割とどうでもいい人間だからでしょうか…。

いろいろ言ってますが、言いたくなるくらい面白い本で、考え方のヒントや著作権制度のOK/NGスレスレが見えてきて、考えるきっかけにもなります。なんでもかんでも、プラットフォームをアメリカのしかも一企業が決めてしまう世の中はイカンという二人の意見には、couldn't agree moreという気持ちです。以上。