中村登監督「古都」346

1963年作品。

この頃の作品が続きます。63年だけどこの映画はきれいなカラー。地味な着物の色合いもよく出ていますが、主人公の二人の顔色の白さと黒さも際立って、カラーであることが効果的。

主人公は岩下志麻一人二役で、一人は呉服問屋のお嬢様。実は捨て子だったのだが、かしこく美しい娘に育っていた。彼女にはじつは双子の姉妹がいて、祇園祭の夜に神社で二人は出会ってしまう。もう一人は村の娘。生まれた家で育ったが両親は亡くなり、ひとりで日々働いて暮らしている。身分の違う姉妹は、再会を心から喜ぶが、行く道は交わることなく・・・・。

私が知っている岩下志麻象印魔法瓶であり「あんたら覚悟しいや」であり、強い強い美人のおばさん、という役柄のイメージでした。「岩下志麻という人生 - いつまでも輝く、妥協はしない」という本を読んで(感想は後日)、あくまでもハキハキとイメージ通りの口調で、しかし内容は多感な女性らしさのを感じさせるのが、ちょっと意外にも思えていました。同じ女性として、強そうにしている女性ほど感受性が強いこともあると、わかっているのですが。

その謎がこの映画で解けました。

お嬢様の千重子は、まだまだ若くて可憐だけど、私のイメージ通りの正しくてまっすぐな女性。村娘の苗子は素朴で激しい感情を持ったパワフルで荒削りな女性。この両方とも、岩下志麻の中にあるんだな、と思ったのです。

千重子的な女性の役ははまり役だと思うけど、苗子のような女性をその後岩下志麻が演じたことはあったのかな?そっちをすごく見てみたくなりました。これからも、そういう女性を演じてみてほしいと思います。以上。