辻村深月「鍵のない夢を見る」279冊目

直木賞受賞ってことで、「オール読物」買うより転売しやすいくらいの理由で単行本を買ってみました。

感想:面白い。とても達者な作家さんです。向田邦子ほど暗くないけど、人間の心のどろっとしたところをとても良くすくい上げていると感じました。

立場も性格も違う女性たちが、ろくでもない男やねたましい女と出会って、心がざわざわしてきたり、つい一歩踏み出しそうになったりする場面を5編の短編としてまとめています。最近は血も涙もない殺人鬼の“絶対悪”を描いたり、普通の人がどこまでも落ちていく姿を描いたりする小説が多い気がするので、そういうのと比べるとこの作家が描く人たちは「普通」です。

きっと息の長い作家として、年を経て深みを増していくんじゃないかな、と思います。楽しみにしてます。以上。