アメリー・ノートン「愛執」313冊目

この人の本はだいぶ前に「殺人者の健康法」「午後四時の男」「畏れおののいて」と読んで、私自身も畏れおののいたものですが、久々に読書を再開するにあたって、この人のその後の作品を読まねば!と探してみたらやっぱりありました。そしてやっぱり美醜がせめぎあう、迫力たっぷりの怪作でした。
こんなに可愛いベルギー人の女の子が…。…なんていうコメントはまさに俗物的で低俗の極致なのでしょうが。

たいがいの人が、自分は「とても美しいわけではない」と思い、見た目のコンプレックスを抱えている人も多いと思いますが、「世界の誰よりも醜い」というのは「世界一美しい」と同じくらい遠い存在でしょう。この小説家は、極限状態を好むのです。彼女が取り憑かれているのは多分、世界一醜かったりする事実ではなくて、世界一醜いことに苛まれている精神的状況で、つまりこの人はけっこう病んでいると思うけど、それが彼女の才能でもあるのです。
そして胸くそ悪くなるような彼女の作品は、今回も妙なカタルシスをもたらすのも事実です。
読者は自分の中の信じられないほどの醜さと向き合い、醜い欲望が成就することで絶望のような安堵のようなため息をつくのでしょうか。