先日「楽園」という本を読んだ、その同じ作家の作品。
HIV感染が発覚する少し前から、エイズ発症、徐々に数値が悪化していく中で書かれた自伝的手記。フィクション化されているのは人名だけと言ってもよさそうです。
当時20カ国語以上に翻訳されたけれど、今は渋谷区立図書館の「保存書庫」で、久々にこれを読みたいという私のような人間を何年もじっと待っていたのだと思われます。
こっちの方が当時は売れただろうに、開架の書架に置かれているのは「楽園」のほうだけ。明らかにあっちの方が普遍的名作という印象が、正直いってあります。
この本を読み終えて改めて、このあとにあの美しい小説を書くに至ったこの作家の、魂の昇華のようなことを想像して、崇高なものに触れたような気持ちです。
エデンの園のようなところで奔放に仲間たちと愛し合う美青年が、突然追放の通告を受ける。残された時間をどう生きるか。
エルヴェ・ギベールの生はなんだか夢のように美しかった、ように思えます。
こんな風に生きてこんな風に死んだ人に出会えてよかったです。