岸恵子「わりなき恋」368冊目

女優の岸恵子が書いた、70歳の女性の60歳の既婚男性との恋。
実話に基づくという噂も気になるし、女性のほうが10歳年上というのもかなりレアだし、70歳の女性の恋愛、とくに性愛は聞いたことがないので、科学的?興味も募ります。

恋の始まりって、細かく書かれると、妙に納得してしまう。
相手が既婚に違いないと思って構えたり、自分の年齢を考えて引いたり、ということを、読者は自分奈良すると思いながら読むだろうけど、これは小説なので(そして書いてるのが今も美しい大女優だし)、特別にこういうハプニングもあるのかもしれない、などと心の門戸を広めにして読み進んでいきます。

著者がテレビのドキュメンタリーで、こんな年齢の人の恋愛なんて読んだことないでしょ、だから書いたんです、というようなことを言ってたけど、そうなんだろうなと思う。女優は自分をさらけ出す勇気がある。渡辺淳一の小説って好きではないけど、医師として中高年の恋愛を促したくて書いている気持ちもあったんだろうなと思う。それとこの小説の意図は似てる。

将来その年齢になったときの自分に向けた恋愛マニュアルとして読むと、女は(人によっては)70になっても恋ができるけど、男はいくつになっても現実と憧れを分けて考えて、現実の女も憧れの女も傷つけて結局孤独になるもんだ、となる。女性が書く悲恋はたいがい男が不幸になる、というのはいつものこととはいえ。

逆にいうと、主人公があまりにもナイーブで・・・まるで小娘みたいにやすやすと年下のプレイボーイに抱きとめられて恋に落ちてしまう。自由な世界でずっと仕事をしてきたから、世間のルールなんて関係ないわ、、でも家庭には敵わない。そういう恋愛の成り行きは、10代だろうが70代だろうが同じなんだと改めて思いました。家庭を守りながら恋愛するなら、たぶん既婚者どうしでないと続かないんじゃないでしょうか・・・・(既婚者どうしでも、まったく同じ条件どうしってことはないだろうけど)

なんというか、ためになりました。