デービッド・アトキンソン「イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る ~雇用400万人、GDP8パーセント成長へ の提言~」374冊目

これは経済の本?日本人論?どっちでもあり、どっちにも寄らないような本です。
著者は、イギリス出身でオックスフォード大学で日本学を学んだあと、数社を経てゴールドマン・サックス証券在籍時に日本に長く滞在し、今は日本の文化財を修復する会社の経営者として京都の町屋で暮らしている人。

ゴールドマン時代から統計に基づいた正確な予測で、精神論を振りかざす日本の経営者たちに煙たがられていた(笑)のが、茶道をきっかけに日本の本来の良さに気付き、以来、本当に良質で、大きな収入を生む観光施設の整備を推奨し続けているそうです。

かなり耳が痛いなぁというか、別に自分の耳が痛いわけじゃなくて痛んでほしいおじさんが500万人はいるよなぁと感じました。自分のことを棚に上げるつもりはないけど、外資に20年以上勤めたあとに日本の会社に転職して、おじさんたちの感情というのがどれほど重要視される組織か思い知って、すごく不思議だしなんとなく気分が悪いなとずいぶん思ったので、この人に共感できる部分はかなりあります。

日本中を観光で回っている身としても、観光地によって外国人はおろか日本人にも不親切でわかりにくい施設が多いと感じてるし、表記なんかが日本中バラバラ、交通手段のルールもバラバラで、過ごしづらいのはわかる。イギリスはもっと文化財の保護にお金をかけていると聞いて、かけていいんだ!だったらもっとかけなきゃ!とも強く感じました。

ただ、日本の観光地の施設、たとえば高級ホテルにおもてなしの心がないというのは、とてもつまらないし的外れなコメントだなと思う。この人が行って幻滅したような超高級ホテルや高級ホテルじゃなくて、安くて親切で融通がきく民宿やら安宿が日本中にゴマンとあるよ。高いところはお高く止まってるもんだ、という意識から、高級なところでは店員が気取ってみせるという不思議な勘違いが蔓延してるのかもね。
でも、観光地以外のところで日本の人たちの良さにも気付いてくれて、よかった。

観光立国というと、猫も杓子もやってきて荒らして帰るみたいなイメージがあったけど、ちゃんとお金をかけて最高の状態を作り出して、要はお金持ちが来てお金を落としたくなるような観光地にすればいい・・・というのはそうなのかもしれない。でも、観光地でそれほどお金を落としたことはないので、彼の言うことが自分でイメージできているかどうかは疑問です。そのため、この部分は共感できてません。

続編を読めば、もう少しわかるかな・・・。