羽田圭介「メタモルフォシス」377冊目

この1冊に収録された2編「メタモルフォシス」と「トーキョーの調教」は、タイトルはバラバラだけど対になっていて、サトウと名乗る二人の対照的な客たちの、SMクラブでのプレイと日常をそれぞれ語っています。

面白かった。
作家自身の露出がありすぎるので、何を読んでも、もはや主人公の両サトウが二人とも羽田圭介に見える。
羽田圭介が黒ビキニ姿で奴隷になって公園を散歩したり、マンションの中で実況中継をさせられている図に笑いが止まりませんでした。

とまで言うと悪趣味だけど、この人の作品は笑っていいんだ、と実感しました。
いろんなエクストリームな状況に登場人物を追い込んでみると、人間ってこんなに可笑しいんだ、というところが表出するんだよ。という実験的な執筆生活の延長に、作家自身がテレビに出てみることもあるんだろうな。いろんなことを知りたい、そのために突き詰めたい、という人となりが作家に向いているし、面白いと思います。

どう考えても「スクラップ・アンド・ビルド」よりこっちの方が面白いと思うんだけど、どうでしょう?