佐々木健一「辞書になった男 ケンボー先生と山田先生」402冊目

すごく面白かった。
三省堂の「三省堂国語辞典」と「新明解国語辞典」の編纂をそれぞれ主導した、ケンボー先生と山田先生の、辞書に関わるあらゆるエピソードをかき集めて、辞書を版ごとに精読し、浮かんできたヒントを丁寧につなぎ合わせて、ひとつの大きな物語を突き止めた、という感じ。
その努力と結果のほとんどは、著者が職業として作っているテレビのドキュメンタリー番組として結実し、それに後日談や出し切れなかったことを加えて書籍化したのが、この本です。

 さすがディレクター。映画でいえば監督です。
絶妙な構成で、読者を筆者に共感させ、魔法のように感動させていく。さすがです。今村昌平的な人の悪さをチラリと感じさせるくらい、感動させるのがうまい。この人のつくる番組も、きっと面白いんだろうなぁ。
この膨大な調査を一人でやるのはほぼ無理だと思うので、番組制作のおかげでこの本も生まれたんだと思いますが、これだけの筆力があれば小説なんかも書けるのでは?という気もします。
もしまた本を書いたら読んでみます。