なかなか読み応えがありました。女性らしい情感あふれるミステリーで、スリリングな構成も文章力も良くできていて、謎解き以外の部分で読み物としてもじーんとくる部分がありました。
辛口コメントをすると、なにかすごく新しいものがあるわけではないのと、主人公が、“端正な優等生なのに単純な王道をあえて外れる青年”という設定なのにもかかわらず、彼の闇の部分の描写が薄くて、ちょっとお行儀が良すぎるのは、作者の思い入れなのかな、と思いました。
(以下、ネタバレのようだけどバラしてません、多分)
犯人は、怪しんだ人たちのうちの1人でしたが、意外性や面白みという点でこの人がベストだったのかどうかは確信が持てません(←って作者に文句を言ってるのか私は?)。クライマックス近く、主人公くんが携帯である人を追い詰める描写では、読みながら一瞬「もしや!?」と思ってしまったので、そのときの驚きと直後の安心が、この小説で一番のアドレナリン放出ポイントだったかも。
邦題「クリスマスに少女は還る」は最後の最後にならないと意味がわかりません、特に「かえる」がなぜ「還る」なのかは。この邦題はそういう仕掛けだけでなく、目を引くという意味でも秀逸だと思います。原題の意味は「おとりの子」という意味らしく、小説中2大キャラなので納得。もうひとりの「おとりの子」は、最初からそうだろうと思って読んでたので、種明かしがずいぶん遅いなぁと思いました。しかし原題って象徴的というか、あっさりしてますね・・・。