ドストエフスキー「カラマーゾフの兄弟」(亀山郁夫訳)455〜459冊目

読んだ〜〜。
重かった。おもしろかった。ドストエフスキーって蠍座だよね。まさに蠍座的な作品だった。
敬虔でありながら放蕩で、情愛深くかつ冷徹で、誰にも興味を持たず自分の不運を嘆きあげる人たち。
特定の人だけにそういう特質があるわけじゃない。人の奥に必ずあるそういう部分をえぐり出してさらしものにするような小説。最近人気の、ドロドロのミステリーと深さが全く違う。これが真実に近づくっていうことだよ、と気づかされる。

現代の道徳って、「人を殺したいと思っても、傷つけたいとか犯したいと思っても、実行しなければ大丈夫」という風になってると思うけど、思った時点でもう罪深いということをこの小説で思い出す。「やらなければいい、我慢してる自分は犯罪者よりずっとえらい」という道徳で、ルールを逸脱した人をを貶める人たちの、依って立つ土台を打ちこわす感覚だ。

この後の物語でアリョーシャは革命指導者になって、リーザだか誰だかとの間に子供をもうけ、コーリャが皇帝を暗殺して革命が成就する。聖人となったアリョーシャはなんらかの事情で自分自身の息子に殺される。というような世界を想像するのも豊かな経験、という気がします。