これも「湿地」同様、陰鬱で愛と思いやりにあふれた人間たちのミステリー。とても力強い文章で、引きつけられてぐいぐい読みました。湿地のときは、犯人の時系列と操作の時系列を並列にした映画のほうが共感しやすいと書いたんだけど、この本は最初から並列で書かれていたので大いに共感しながら読んでしまった。ただ、最後の最後の種明かしは、若干あっけなくて、見つかった白骨死体以外の失踪者のことはやぶの中のまま。生き延びた母子の人生も多くを語られることはなく。なんとなく大味なのにやたらと繊細でもある不思議なアイスランド気質、なのかな。妖精や霊魂の存在をわりとみんな信じていて、人が生きていたのか死んでいたのかという、英米なら何より重視しそうな点にはそれほどこだわらない。
もっと翻訳されてるなら、他のも読んでみたいです。