アーナルデュル・インドリダソン「厳寒の町」609冊目

この作家の、日本語翻訳の出てる作品、これで読破だ!

陰鬱な風景、暗くて覇気のない登場人物たち、根深い人間関係が根幹にある犯罪を特徴とするこのシリーズ。今回は移民の人種差別問題に焦点が当たります。

2019年夏にアイスランドで現地ツアーに参加した時、毎日入れ替わるガイドの中に一人アジア系のガイドがいたんだけど、わざわざ「自分はアイスランドで生まれ育った」と断りを入れてました。湖の上を船でめぐるオプショナルツアーのガイドはフランスから3か月前に来たばかりの女性だったけど、彼は自分が来たばかりの移民じゃないことを主張する必要を感じてたみたいだった。

私が泊った安ホテルには他の町から来たらしい小学生くらいの団体も泊っていたんだけど、びっくりするくらいお行儀が悪い上に、アジア人の私を見てくすくす笑ったり陰口を言ったりしていて、引率の先生はそれを叱ることもない。…アイスランドはまた行きたいくらい美しく素敵な国で、そういういくつかのことで印象が変わることもないけど、まあ外に開かれてない島国だなぁと感じたものでした。

だからこの本のテーマがなんとなく実感できる。緯度の高い土地に住む人はプラチナブロンドで透明な肌色の人が多数だから、濃いアジア人は目立つし違和感もある。どのくらいこの問題が深刻なのかまで把握するには短い滞在だったし、東南アジアから行って仕事をしている人を見かけることもなかったので、少しだけ深く知ることができた気がします。

次の作品も翻訳にかかってるようなので、今年発売されるかな…。引き続き読んでいこうと思います。