外国で翻訳文学賞をとったと聞いて、さっそく読んでみたら、この人は創作家である前に社会活動家だ、と思いました。実際のところ上野のホームレスの人たちは、ホームレスでない人たちと同じように幸せになろうとして生きてきたんだけど、ホームレスになった。それ自体がとんでもなく不幸というのではなく、家があっても極めて厳しい人生を送ってる人もいる。家がない人生の中で嫌気がさしたり八つ当たりしたくなることもあるだろう。でも、いろんな人がいるはず。この作者は、その中で辛い思いを持っている人の不運に注目しがちな感じがあります。
一方で描写は、豊かで自由な想像力にまかせて飛び回る。私はマジック・リアリズム小説が好きなので、それもいいんだけど、全く同じテーマを描く小説でも多分、まるで不幸に縁がないような一見ハッピーなホームレスの中にある真っ暗な深淵から、ここではない別世界へ飛んでいけるような小説のほうが、きっと好きなんだと思います。
あくまでも好みの問題。社会活動家としての活動は、基本的に応援しています。
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