萩尾望都「11人いる!」621冊目

Eテレの「100分de名著」恒例の年末年始特番で「100分de萩尾望都」という番組をやっててたのを見て、読みたくなって借りてきました。

私も小さい頃から、日本の少女として正しく少女マンガを読みふけったものでしたが、萩尾望都作品は(む、むずかしい…わからない…)と敬遠しがちでした。最近はこむずかしい映画を見てエラソーに感想を書いたりしてますが、そういえば私は元々バカ娘だった‥‥ははははは。

さてこの「11人いる!」は短いので、私でも昔面白く最後まで読んだ記憶があります。11人目の正体もうっすら覚えてたけど、やっぱり本当に面白かった。何より、SF世界の前提(世界観とか呼ばれるやつ)がしっかりしてる。今さら私ごときが言うことでもないけど、最近の超おもしろい中国SFの50年近く前にこれほどの名作が描かれていたという事実にはっとします。内容の充実に負けない絵の美しさもすごい。キャラクターに変な色がないのに個性がそれぞれ魅力的に際立っていて、飽きません。

そもそもの知識の豊富さは、どこから来るんだろう。週刊誌でなく月刊誌の連載だと、毎回調べ物をする時間も取りやすいのかも?しれないけど、この人は「一度ぱっと見たことを忘れない」んだろうか、何か魔法があるのか?と思うくらい、この作品なんてまだ26歳で描いたことが信じられないほどのどっしりとした作品です。

「両性具有」ではなく「性が未分化の両性体」という設定をするための調査とか、冒頭の、星々の民族の類型づけとかも詳細でありながら破綻がない。これを描いた人の頭の中は、広くて豊かで安定した王国みたいなもんだろうか。

「続・11人いる!」は、最初から描く予定だったのかな。タダとフロルの魅力のために読者から続編を求める声がそうとう上がったんだろうし、”入学後”のことも描きたいと思ったんだろう。とても面白かったしこっちのほうが(死者も出るし)重みがあるけど、うち棄てられた宇宙線の中に規定以上の人間がいて、何も知らされないまま漂う…という設定の最初の作品のほうが、緊迫感や新鮮さが突出してますよね。

さあ、次はどれを読むか??(描かれたのは1975年、文庫本1994年12月10日 580円)

11人いる! (小学館文庫)

11人いる! (小学館文庫)