「アンナ・カレーニナ」みたいなお、人間の深い業のお話だった。虚飾と愛欲といろんなドロドロなものが渦巻いてるいやな世界。でも、ああ、そうか、歴史小説を読むのも嫌いだし、周囲の人たちのゴシップを言うのも聞くのも私は昔から嫌いで、そのために同性の友達ができにくかったのは、みんなこういうドロドロを愛してるからなんだろうな。変わってるのは私のほうなんだろう。この本を読みながら、早く抜け出したい気持ちがつのる。それでも読み進むのは、何事も最後までやらないと落ち着かないから。この本を読み始めたのも、三島由紀夫っていう謎を解き明かさないと先に進めないような気がしたからかな。
それにしても絢爛豪華ですごい名文でできた作品だった。登場人物たちは悪徳のかぎりを尽くしているけど、作者はこの連作を、死後に自分はノーベル文学賞を受けるくらいのつもりで描いたんだろうなという重い決意が伝わってきました。