三島由紀夫「美しい星」651冊目

珍しくSFめいた作品。星新一の本の題名にありそうな。

しかし登場人物は、何かの強迫観念的イデオロギーを抱いてしまった潔癖症の人々という意味では、三島由紀夫のあらゆる小説と共通しています。

自分の本質が金星や木星から来た宇宙人で、地球人の身体を借りて、地球人を救うために日々を過ごしていると聞くと、NHK「LIFE」の「宇宙人総理」を思い出してしまう。あっちは青い顔をした明らかな宇宙人なんだけど。

読み終えて、やっぱり三島由紀夫は文豪だな、と思う。面白さ、時代性、文章力、構成力、社会性、知識の広さと深さ、作品の芯になる思想の強さ。

それにどの作品にも共通した個性がある。作家と同時代に生きていたら、単行本が出るたびに読んで感想を友達と話し合ったりしただろうなぁ。

美しい星 (新潮文庫)

美しい星 (新潮文庫)