坂下千瑞子「がんになった人だけが知っている人生で大切なこと」663冊目

中年になると、友人や知り合いにがん経験者が何人もいます。私なんて、健康診断で再検査になっただけで眠れないくらいなのに、見つかってしまって、入院することになって、手術して…という心労は想像もできないです。何の気なしに、あるいは励ましたり慰めたりするつもりで、ひどく傷つけてないかと考えると、まったく自分に自信がもてません。

彼ら彼女たちの気持ちを少しでも知りたくて、借りてみました。この本にはおそらく、前向きにいることを選択した人が多く出てくると思うので、これだけで全てがわかるわけではないけど、せめてものスタートとして。

で、この本なのですが、全部当事者「サバイバー」のドキュメンタリーで、半分くらいマンガになってるので、とても親しみやすく興味深く読めます。シリアスなことだと思って苦手意識を持っている人にこそ、おすすめ。

みなさんが言っていることは、がん以外の病気やけがで生死の境をさまよったことのある人たちが言っていたことと共通しているような気がします。今日があるのは、明日がくるのはラッキーで、いつ何が起こって命が失われるかわからないから、今やれることをやろう、嫌なことをしないで楽しく暮らそう、ということ。

私は余命を告げられるような病気にはなったことがないけど、母が早く亡くなったりしたので、ずっしり胸に来るものがあります。

なんというか、世界はもともと素晴らしい場所なので、嫌なこと辛いことがなく、ありがたみを感じる気持ちさえあれば、今いるところが天国なんですよ。この気持ちをずっと持ち続けていたいと思います。

(2021年3月1日発行 1320円)