あー面白かったー!
本を読んだだけなのに、まるで自分がその世紀の証明にずっと立ち会ってきたみたいに、祝杯を上げたくなっている。ロールプレイングゲームで、アンドリュー・ワイルズと数名の最後まで協力した勇者(数学者)たちと一緒にチームを組んで、とうとうダンジョンを制圧したような。自分は足手まといにしかならなかった、犬とか狸とかのキャラだと思うけど。志村・谷山両氏を始めとして、チームに加わりながら初志を貫徹できなかった勇者たちも多数。もとより、ワイルズだって最初から隊列に加わってたわけじゃなかった。だけど、世界最大の(かどうか知らんけど)謎を残して消えたラスボス(いや悪役じゃないけど)フェルマーはこのとき完敗を期したのだ!(いやむしろ共に勝利を収めたのでは)
浮かれて不適切な例えをいつまでもしてしまうくらい、冒険活劇みたいに面白く読みました。数学者たちも恐ろしく魅力的だけど、彼らをここまで輝かせるサイモン・シンって人の筆致はすごい。流れるように自然な日本語訳にしてくれた青木薫の力も無視してはならない。
だけどこの本をもし10歳のときに読んだとしても、数学の本を開いたとたん、「やっぱ私、文系だわ…」と閉じてしまったと思います。
それでも、沼にはまった数学者たちの気持ちを少しだけ理解できた、ノンフィクション数学ダンジョンエンターテイメントの大傑作でした。とにかく面白いから読め、と誰にでもお勧めしたいです。