李琴峰「星月夜」741冊目

これで出版されている作品は全部読んだかな。台湾から日本に来て日本語を使って仕事をしている女性の、さまざまな恋愛。今回彼女は新疆から来た、ウイグル族のボーイッシュでキュートな女の子と恋に落ちます。中国のなかでイスラム教徒であるウイグル族は政治的に語られることが多い存在だし台湾もまた中国語文化圏のなかで独自の立場を保っている。彼女たちは、また別の女性たちに憧れたり恋愛したり、興味のない男性に言い寄られたり、国に残してきた家族との確執があったりしますが、おおむね日本という異国で落ち着いて暮らしています。

「長く住んでみれば日本もいいところだ」じゃないのだ。祖国を逃れてきたけど、ここにも生きづらさがあった。「地上のどこにも天国はない」という、受け入れと諦め。だからその後、架空の島へと物語の舞台が移っていったのかな。(短絡すぎる洞察)

恋愛そのものの、相手のたとえば体のパーツをくまなく観察して惹かれたり、言葉尻に一喜一憂したり、というのが、私にはもうちょっとしんどいところがあるのは、歳をとって昔を思い出すようだから、あるいはうちの猫の瞳や毛並みにいつも見とれていられるから、人間のことはもういいのか。猫は一方的にこっちの愛情だけで、部屋に閉じ込めて一生独占できる、愛情のはけ口なのだ。せめてそれを認識して、わきまえて猫の幸せを考えて暮らすのだ。

話がそれたけど、猫と違って人間の心は閉じ込められないから、思いはすれ違う。一生愛しあえる誰かとめぐり会えるとは限らない。この主人公が相手を求めわびるのはいつかハッピーエンドを迎えるんだろうか。ハッピーエンドのほうが多分、ずっと誰かと暮らすというストレスに耐えることなのかもしれないけど…。