綿矢りさ「ひらいて」761冊目

この間見た映画「勝手にふるえてろ」がとても面白かったので、映画「ひらいて」も見ようと思ってるけど、図書館で見かけたので今度は原作を先に読んでみました。

重い…衝撃波が…破壊力が…。相変わらずすごいわ、この作家。シチュエーションは、黒いけど現実にけっこうありそうな三角関係なんだけど、主人公ののめりこみ方が常軌を逸していて、かつ攻撃された二人の腹の座り方もすごいので、三つ巴というか三すくみというか、ぶつかりあって巨大なエネルギーが生まれます。

そのとき、一方的な破壊者であった主人公が受け身でもあることに気づき、彼女が巨大な風穴を開けたことでやっと膠着しきっていた、古く硬い不幸の表面が解け始めてくる。

似たような思いをしたことがある人はゴマンといるはずだけど、ここまでの破壊は経験できない。自分と好きだった人も、あるいは親友だと思ってた人も、ここまでお互いに開けば大きな地震が起こせたんだろうか。

停滞と安定の共存→やむにやまれず発生する破壊と混乱→何か固まっていたものが壊れ、何か新しいものが強大なエネルギーとともに生まれる

のが、この作家の作品じゃないかな。見逃されずに世に出てきたのは当然の才能だったなぁ…と改めて。