コロナ禍を予見したかのような過去の映画、たとえばコンテイジョンを、この時期に見ると臨場感あり過ぎてキツイかなぁと思いつつも、関心が強くなっててやっぱり見てしまう今日このごろ。これもまた、謎の感染症が世界を席巻する作品とどこかで聞いて読んでみることにしました。しかも著者はノーベル文学賞受賞者。ノーベル文学賞受賞者ってもともと知ってる人や日本人でもなければ、多分一人も知らないし読んだこともありません。もうちょっと世界の才能に触れた方がいいんじゃないかー、という気もするので、気になった人の作品を読んでみよう。
でこの小説。ノーベル賞と聞いただけで、すごく形而上的だったり哲学的だったりして難しいんじゃないかと思ったけど、そういう心配は無用。芥川賞じゃなくて直木賞と言う感じの大衆小説のような読みやすさ。でも、何の前触れもなく起こる失明が、発症者に触れた人に伝染してしまうという重さ、強力な感染力、隔離された人たちへの扱いの悲惨さで、読んでてどんどん嫌~な気持ちになっていきます。筒井康隆作品とか、カタルシスを与えないSFのような読み心地。最終的にオチがつきますが、ひたすら描かれるのは、視覚を失った人類がさまよい、今まで視覚をもって築きあげてきた文明を叩き壊し獣の本性だけで生き延びようとする世界。面白かった。怖かった。
映画化もされてるので見ようと思います。「複製された男」の原作もこの人なのね。あれも、見返しても謎の多い作品でした。こういう作品をSFと呼ぶ人と呼ばない人がいそうだけど、私は星新一や筒井康隆を思い起こさせる創作力に敬意を払いつつSFの名作と呼びたい気がします。