岸政彦「リリアン」809冊目

この人の小説は、ものすごく好きだけど、とてつもなく寂しい気持ちになる。

「図書室」は病弱だった子ども時代に、一人で部屋の窓から外の雨を見てたときみたいな気持ちになったし、「リリアン」はよくわからないまま付き合い始めた人と、なんの未来も見えないまま布団のなかで夜更かしや朝寝坊をしていた週末みたいな気持ちになった。この人の文章の世界に浸っているとき、みんなどんな気分なんだろう。息苦しくなってるのは私くらいなのかな。

会話のあいまいさを、そのまますくい取って少し笑い合えるような関係は、とてもやさしい。その機微は私には難しくて、「よくわからない」って答えたり笑い飛ばしたりしてしまいそうだ。そこをするっと流せる人間関係に、憧れるようでちょっと怖い。何かに埋もれてしまいそうで。・・・私は、人の話をさらさら聞き流して適当な相槌を打ってることは多いけど、それと同じなんだろうか、違うんだろうか。楽器を演奏するのは楽しいけど、ジャズのインプロビゼーションは無理、と思う私は自分で思ってるより杓子定規な人間なんだろうか。

みんなこの本を読んでどんな風に思うのかな・・・。

リリアン

リリアン

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