岸政彦「はじめての沖縄」817冊目

このタイトルで、旅行ガイドだと思って読む人がいるんだろうな(笑)。本屋の店頭なら、売り場でわかるだろうけど、私みたいに図書館で借りる人は、タイトルくらいしか情報がないから。間違って読む人を意図したタイトルなのかな?

感想をいうと、私自身の中にもある沖縄への憧れと愛と不安と怖さ、いろいろな事情や背景をすごく丁寧に解きほぐしてくれていると思います。一人の人間を見ても(自分を含めて)、やさしさと乱暴さと良さと悪さ、賢さと愚かさ、さまざまなものが入り組んで生き物みたいに組成を常に変化させている。沖縄は地球上の他のすべての部分と同様、楽園ではなく地獄でもない。楽園でもあり地獄でもある。心の中がいつも複雑で、沖縄に行くとき、特に地元の人と話すときは、少し緊張する。

私も泣いたことがある。ある島に東京から行って長く住んでいた人のツテで、大勢でそこを訪れたとき、町の「結」の飲み会に招いていただいて、みなさんの明るさとやさしさに胸がいっぱいになって、帰り際にみんなで泣いた。あのときのことは一生忘れないだろうな。(としか言えない)

どこの国の人たち、どこの地域の人たちとも、境界線を意識しながら手を伸ばし合うということは共通してる。フルタイムの仕事を辞めて以来、本を読んだり映画を見たりする時間はたっぷりあるけど、他人と境界線を意識しながらじっくり話し込む夜はない。私が欲しいのはそういう時間だけなんだけど、外資系企業に再就職しなくてもそういう場を持てる機会って作れないかな・・・。