アンソニー・ホロヴィッツ「ヨルガオ殺人事件」上・下826~827冊目

今回も面白かった。

思うに、①「ミステリーinミステリー」という仕掛けを楽しむための作品だということと、②アラン・コンウェイ作ミステリーにはアナグラム等の言葉遊びが大量に隠されている前提であること がポイントの小説なので、純粋にその部分を楽しむのがベスト。全てのひっかけにひっかかり、ほとんどの伏線を見逃し、著者の意のままに流されるのが、この人のミステリーを最大限に楽しむやり方です。

とはいっても、読み終えたあとでゾクっと来るような、人間のサガの深さとかは感じない。なぜなら、この作品でもやっぱり動機がうすいから。それぞれに事情があって、積年の恨みを持っていたかもしれない、と頭ではわかるけど、犯人として明かされる人物たちの殺人をしない人たちとの違い、つまり異常性が本文でほとんど書かれてない。犯人だと判明した後で「実はこんな性格だったんだよ、アッハッハ」と急に言われても、「ズルい」としか・・・。

でも、いっそのことこれを大娯楽映画へと仕立てて、ジェットコースターのように転がしてもらえたら、それも良い気がします。映画館は密室で、ほかの情報が一切入ってこない純粋領域なので、閉じ込められて画面だけを食入るように見ていたら、この小説はもっとすごい作品になりそう。

いろいろ言ってますが、他の作品も引き続き読みます。引き続きよろしくお願いしますホロヴィッツ先生。